2016年11月29日火曜日

「ルフラン」制作秘話



制作秘話なんて書いちゃったが、そんな大したものじゃないのであった。
これは20年ぶりの新曲。ファイルデータとして残っている曲の15番目になる。
作って録音した曲はこの3倍くらいあったが、当時はカセットテープに残してあったので、引っ越しなどに紛れて紛失してしまった。残っているものは、当時DATにしておいたものをPCに取り込んでMP3などにしておいたものだった。
一番古いものは1980年に作ったものだった。まだMIDIの無かった時代だ。
そして直前のものは、1995年。これは残っていない。確かソニー・ミュージックでゲーム用曲(Playstation2の頃)の作成者を公募していて申し込んだものだった。落選したが。


前はMacintoshを使用し、MIDIシーケンサーとしてPerformerを使っていた。MIDI音源、ギターなどのアナログトラックは8chのMTR(カセットマルチトラックレコーダー)、それらを同期してミキシングしていた。
今はそれを、1台のPCでシーケンサー、MIDI音源、デジタル録音トラックを全て備えたDAW(Digital Audio Workstation)というソフトウェアで実現可能になっている。ついでに残響処理のリバーブやディレイ、コーラスやフランジャーなどのエフェクト、それにリミッターやコンプレッサーなどの機能も全て揃っている。
つまりPC1台のみで全てのDTM(デスクトップミュージック)の制作が可能になっているわけだ。

さすがにこれだけ機能が盛りだくさんだと、使いこなすまでに相当な時間がかかる。
私が購入したのはCakewalk Music Creatorという初心者向けソフトウェア。去年くらいに買ったと思っていたが、購入は2011年だったw歳は取りたくねえw
ソフトウェア自体は5千円くらいのもので、UA-1Gというマイクやギターをデジタル録音するためのインタフェースが付いて1万5千円くらい。なぜかこのインタフェースは単体で2万円くらいする。経年劣化(加水分解)で本体表面がベタベタし始めているのが玉に瑕。

さて、ルフラン。
題名のルフランは、英語でrefrain、つまり音楽用語のリフレイン。
はじめは英語にしたかったが、当然誰かが既に使っていると思い、その通りに他の方の曲で使われている題名なので、フランス語にしておいた、というだけ。
ちなみにルフランというやはり他の方の曲もあるが、これ以上素敵な題名をひねり出すほど脳みその電圧が残っていない。

実はこの曲は、放っておいたDAWソフトを使って、昔夢中になっていた音楽制作をもう一度やってみよう、ということで、DAWの使い勝手を確かめるテスト的な曲。
特にこだわった制作背景は無く、アコースティックギターとエレキギターの録音+MIDIを試したくてやっつけで作った曲、という前提を白状してしまう。
アコギの簡単なコード展開にペンタトニックのリフ(リフレイン)を乗せ、それを繰り返したものだ(だからリフレイン=ルフラン)
ファイル名はTEST1から始めて、仕上がった頃はTEST4-7-2。このままではあんまりだと思い、アコギの優しい響きもあるからリフレインかなあ、でもこの題名は使われているだろうなあ、うーん・・・という曲なのであった。

アコースティックギターの録音は自宅。マイクはSHURE SM-58。これは娘から借りた。
ボーカルスクールに通う娘への誕生日プレゼントだったが、どうせなら業務用定番のゴッパチを、と送ったものだった。
ついでにマイクスタンドはSUGI PROのグースネックのデスクスタンド。これもプレゼント。ナレーションスクールにも通う娘はこれでPCに自分のナレーションを録音して練習している。このへんの機材はすべて業務用で、安いヘナチョコは使う気がしない。
もっとも、お金をかければいいというものではないが、こういう部分でケチると後で必ず後悔してきたので、まともなものを選んだ、というわけだった。

さて、アコギの録音。
平日の有給休暇で誰もいない時に、リビングで取った。
イスに腰掛けて、もうひとつのイスにマイクをセット。
テスト的に作るだけのつもりだったから、弦も張り替えなかった。20年以上も前の弦。あんまりだな・・・
SM-58はさすがにきれいに音を拾う。セオリー通りにブリッジ側からサウンドホールに向ける。音があまりにも張りが無く、金属音がしなくなってしまっている。まるでガットギターみたいだ。
まあ、このアコースティックギターも安っいものではある。
購入は1981年。CATSEYEというメーカーの2万5千円のもの。もっと高いものも2~3本持っていたが、処分したり人に譲ったりしてしまった。
うちのネコの鳴き声入りでとりあえず録音はしてみたものの、途中で「そうだ、PVっぽいものも作ってみよう」と思い立ち、それにはさすがにみっともないと思って京王八王子駅ビルの島村楽器でMartinの弦を買ってきて張り替え、改めてテイクを取り直した。

エレキギターはFender Japanの5万円くらいのストラトキャスター。ギターもかつてはたくさん持っていた。30万円もするFender USAも2本くらい持っていたが、これらも既に遠い昔の話。今はこの押入れから引っ張り出した、1本のストラトのみである。
私はストラト派で、レスポールを持ってみると、指坂の感覚があまりに違っていて、演奏がボロボロになる。
エフェクターはDAWソフトを購入したあたりに一緒に調達したZOOMのマルチエフェクター。
使い方がいまだによく分からない。適当なオーバードライブサウンドを選んで使った。

その他のパートは全てMIDI。DAWのおまけ音源、と思いきや、ドラムなどはえらいリアルな高品位音源でびっくりした。
キーボードはKORGのNanokeyというミニ鍵盤を使ったが、さすがにやりずらかった。
Rolandの標準鍵盤の43鍵も買ってあったが、リビングのテーブルにどーんと置くのも憚られてNanokeyで家族の奇異の目に晒されながらちまちまと打ち込みをしていた。

やっぱりノートPCにこれだけの仕事をさせるのは、ちょっと無理がある。DAWソフトの動作の不具合に時々悩まされながらの仕上げだった。
もっとも、ちょっと工夫をして仕事を軽くしてやると、上手く動いてくれる。この辺はPCの使い方の勘どころで、多少は融通が利くものだ。

曲は出来た。やっつけで作ったとはいえ、これだけ高機能な制作道具があると、それなりのものが出来る。
実はこれらのDAWソフトはループフレーズなどをサンプルで備えていて、それを使うとプロ制作同様の曲が作れてしまうという機能も備わっているが、それをしてしまうと私の場合「自分で作った曲」という感じがしなくなってしまう。参考にするのは勉強にもなってありがたいが、やはりダサくても自分で作った曲であって欲しい。

ギターもミストーンが多い。リードギターもカッコいいフレーズに欠ける。でも、そのまま残した。これは、かつてソングライターを目指した私の、下手糞だった私自身の軌跡。
それでいいのだ。

さてさて。
PVというからにはギターを弾いている場面を取りたい。近所の河原でも、と思ったが、清流は清流なのだが(源流域まで僅か3~4km)草ぼうぼうで出来そうにない。
そこで近所の小学校の裏山に行ってみる。
まあ、ここならよかろう。
ギターやPCなどの機材もかかえているし、あまり大げさな移動も出来ない。ホントは峠などで撮りたいが、これらの機材をかかえて低山に登山するのは無理だ。
キャンプ用のイスを据えて、Goproを準備。三脚を使ってセッティングする。

・・・・と、なにやら派手に藪を突き抜けて走り回る音がする。オフロードバイクか?と思ったが、エンジン音がしない。MTB?いや、自転車で走り回るようなカワイイ音じゃない。
なんだ?熊か?とびびっていたら、でっかい牡鹿が近くを走り回っていた。
おいおい、ここは奥多摩じゃねえ!東京都八王子市だぞう。

気を取り直してPV撮影開始。
最初はアコースティックギターから。
ヘッドホンでモニターしながら、カメラ位置を変えて撮っていく。
後に手作業で曲と同期させるのだ。
日を別にして、エレキギターも取る。
その他に、小川や木漏れ日など風景をちょこっと撮影。

散歩の犬君やお爺ちゃんにも出会わず、無事終了。
あとはいつものAviutlで映像と曲を合わせる。
カメラで弾いている音を拾うので、ピッキングの瞬間と音で同期を取った。エレキギターは僅かな音だが、ヘッドホンでモニターすれば判別がついた。

林間なので、ちょっと絵が暗い。おまけに晴天というわけではなかったので、余計に暗く感じる。
でもまあ、驚くほどPVっぽくはなってくれた。ギターは下手(´・ω・`)だが、MIDI音源が高音質なのと、編集機能が豊富なので、ヘタクソな曲作りを十分補ってくれている。

ドラムのパターンは、サンプルを1つだけ使った。ハイハットは気に入らなかったので全削除して取り直し、ライドとクラッシュシンバルは別音源から持ってきた。他のフレーズは全て手弾きで作った。
ベースはアコースティックベース(ダブルベース)の音。
ピアノとマリンバはマルチティンバー音源の安い音だったが、十分満足だった。
ストリングスは高品位音源を使ったが、思ったより効果が薄かったかもしれない。
アコースティックギターのバッキングは薄いリバーブで、本当ならスタジオ系の残響が適していると思うが、デフォルトのホールリバーブをそのまま使った。このバッキングパートは左右で別々のテイクとして取り、若干チューニングをずらしてステレオ感を強調してある。
リードにはコーラスも若干かけてある。最後のセカンドパートで、一番最後の一音はDなので、5弦と6弦のチューニングを落として弾いた。
エレキギターは、ディレイをPCエフェクトでかけてある。
デジタル録音のトラックは合計で20くらい使っただろうか。さすがに全て残しておくと動作に影響が出たので、まとめたり、不要なトラックは削除したりして、何テイクものファイルとして管理した。

これらは、全て1台のノートPCで出来る。
私が再三「スゴイ」と感じているのは、膨大な過程を経て作られていく音楽制作のプロセスを、たった1台のノートPCで出来てしまう、という、まさにこの点にある。
発想は、ごく一部のリフやフレーズだったりする。そこから効果音や他の楽器が絡む場面がイメージされ、主旋律や間奏、イントロ、エンディングなどが頭の中で鳴り響いてくる。
たった1音のクラッシュシンバルや、ベースの全音符の切り方が気に入らないことも多い。
突然3拍子のパートを加えたくなり、大胆な転調を試してみたくなったりする。
その変更に合わせて、ドラム、ベース、他のキーボードパート、ギターなどが、有機的に変化していく。
それを作り上げていく過程を司るのが、DAWソフト、というわけだ。
スゴイと思いません?

ロックやポップスとはいっても、それは芸術作品を作り上げていく創作活動と同じプロセスが必要になる。
専門的な技術や訓練は受けていなくても、オーケストレーションなども可能なのだ。
ホビーとはいえ、創作の世界に踏み込んで無から形を作っていく興奮は、一度味わってしまうとなかなか止められない。
音楽にはそんな魅力がある。
私の作ったたどたどしいPVも、そんな一作品。シロウト臭い曲作りも演奏のミストーンも恥ずかしいが、創造は人間性の解放という大袈裟な見得を切って、私自身の作品集にもうひとつを加えてみた。

一枚だけCDにしておいて壺に入れ、山の中に埋めておこうかな。

2 件のコメント:

  1. こんにちは壱号さま^^ お独り様ノ焚き火で御座います。
    此方には初めてのコメントになりますでしょうか。
    なんとなく なんとなくですよ 話始めたら止まらなくなる
    そんな気がしています。
    小生ももう40年ちまちま音楽してて
    DTM以前からカセット2tr~8tr
    オープン8tr MD8tr HDD8trと
    渡り歩いてきました
    いつの頃か MIDIシーケンスの打ち込みについていけず
    アナログオーバーダブから抜け出せず
    音楽制作も ネタが天から降りてこなくなり・・・数十年^^。
    骨壺に入れてほしい一枚をCDにし 友人に託したのが 十年前^^.
    其の内の 数曲をユーチューブ動画のBGMにしてる現状です、
    壱号さんの PVならびにブログを拝見して 
    なんとなく なんとなくですよ・・・
    またイメージが沸いてくる か な と
    天から降りてきそうな気配が しています。(笑)

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  2. おはようございます。ぜひ!ぜひぜひ!新曲を!
    オープン8trは私も欲しかったなあ。資金力にも限界があり・・・(´・ω・`)
    今のノートPCでのDAWはかつての淡い夢を少し実現させてくれますね。
    次の曲も作成中です(;^ω^)

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