2018年3月31日土曜日

ギター歴43年にしてストラトから離れる決心をする

13才からギターを初めて42年間、ずっとストラトキャスターを弾いてきた。
楽器屋に勤めていた頃はフライングVを買ったりスタインバーガーを買ったり(どちらもコピーもの)、色々と浮気もしたが、バンドで使うのはいつもストラトだった。


もう何本所有したことがあるのか、憶えていない。


激安のフレッシャーというパチもんから始まり、フェンダーUSAを何本か所有していたこともある。挙句にはボディ材とネック材からフレットを自分で打ち、ピックアップ等を自分で取り付け、フロイドローズを自分でボディを加工して、ほぼ一から自分で組み立てたギターをライブでずっと使っていたこともある。
(塗装だけは出来なかった)

そんな遍歴も結婚を機にバンドも自作曲の制作も遠ざかっておよそ20年。たくさんあった楽器はほぼ全てかつての勤務先の楽器屋に売り払い、残るは押入れの奥に2万円のアコギとフェンダージャパンの白いストラト1本となっていた。

フェイスブックでかつての同窓生と偶然に繋がり、これまた偶然にそこから高校生だった頃のバンドが復活し、おやじバンドに押入れに眠っていたストラトを引っ張り出して持って行った。


もちろん、ギターの腕前はボロボロに落ちている。もともとそんなに上手でもなかったが、かつてはそれを自分に認められないくらいには若く意固地であった。

自分はハードロックばっかり弾いていたが、実はストラトというギターは初心者やヘタクソにはツラい機種でもある。
ロングスケール、指板のアールはきつく、フレットは細く低い。
ピックアップはシングルコイルでパワーも無く太い音は苦手、おまけにサスティンは望めない。
純正のトレモロアームを使えばチューニングが狂う。

これらのマイナス要素を他の機種の差で補うと、まるで自分が上手になったように錯覚する。
かつて所有していたエレキギターのうちの1本、YAMAHAのSF-7000という機種がお気に入りの1本だった。
ミディアムスケール、スルーネック、2ハムバッカー。フレットはミディアムサイズでストラトよりはだいぶ太め。
これだけで嘘のようにフィンガリングが楽になりチョーキングもびしばし決まり、ハムバッカーの太いサウンドで更にはスルーネックの超ロングサスティンが得られた。
惜しむらくはアームが付いていない。ヘタクソなチョーキングビブラートをアームで補うという姑息な技が得られないのだ。

ストラトの辛い修行のような弾き心地から、ときどきYAMAHAに手が伸びた。
アームが無く、ピックアップ切替えスイッチの位置がレスポールと同じ、それが苦手でライブには使わなかったが、このギターの素晴らしい弾き心地が忘れられなかった。

約20年ぶりに引っ張り出したフェンダージャパンのストラトは、演奏から遠ざかっていた私に悪戦苦闘を強い、そしてかつての「一生懸命に弾く。全力で!」という、ストラトの"弾き方"を思い出させた。
それは懐かしさも相まって、快感でもあった。

ただ・・・
この約7万円だったストラトは、そんなに使っていなかった、と思い込んでいたのだが、いざ押入れから取り出してみると、

・トレモロスプリングが弱すぎるが、ボディ裏面の掛け具(スプリング・ハンガー)の調整幅は一杯でこれ以上詰められない。


・ブリッジを固定している6本のスクリューを調整しようとしたら、1本途中で折れた。スクリューの頭はすでに青緑に錆だらけ。残り5本も怖くて触れない。


・オクターブ調整が合わない。

・PUを含め電気回路は接点のノイズが多く、ぼちぼち寿命がきている。しかし、全取り替えしようにもPUガードのネジの頭が錆び着いて回らないものがいくつかあり、簡単に折れそうなものが多い。


・ネックそのものはほぼ反りもなく状態はいいが、フレットが見て分かるくらいに擦り減っている。メイプル指板なのでリフレットは5万円コース。


まだまだあるが、これくらいにしておこう。要するに、相当使い込んでた上に、長年押入れに閉じ込められて状態が劣化し、きれいにリペアしようと思うと、ステキなギターが1本買えるほどにお金がかかり、並々ならぬ手間と時間がかかる、というわけだ。

いっそのこと、ネックだけでも丸ごと挿げ替えてしまおうか、とも考えたのだが(ネックだけであれば5千~1万円くらいで買える)、どうしても許せないのがヘッドの「Fender」のロゴ。フェンダージャパンとはいえ、王道であるフェンダー社のロゴを捨てるのは私には忍び難かった。


いっそのこと、新しい1本を買うか・・・

すでにフェンダージャパンは消滅し、本家のUSAしか選択肢は無い。
当然、20万円コースだろう・・・と思ったら、案外7~8万円でも手に入るラインナップがあることが分かった。

と、ふとここで思った。

これまでずっとストラトを使ってきた。ストラトこそが我がギター人生だと思ってきた。
それは本当なのだが、今、これからの”残りのギター人生”はどうなのだろうか?
自分程度の腕では弾くに辛い、ストラトは本当に自分に合った機種なのだろうか?
単に、自分の片思いだったのではないだろうか・・・

楽器というアーティスティックな領域では、本人のこだわりや愛、または執着心などが大きな要素を占める。
合理的に、自分に合う合わない、弾きやすい弾きづらいだけで、この1本に入れ込む気にはなれないものなのだ。
もちろん人にもより、それほどこだわりなく合理的に最適化された1本で満足する人もいるのだろうし、もしかしたらそういうバンドマンのほうが多いのかもしれない。
私はストラト以外に自分の使用する機種は無いと頑なに思い込んできた。

ここにきて、私はそれを自ら覆すことにした。
今の私にかつての本気度は無い。音楽が私の生活に占める割合はかつては90%以上といってもいい極端な指向だったのに、今の私は、おそらく10%もあるかどうか、それすら疑わしいほどになっている。

フェンダー製、ミディアムスケール、標準的かあるいはやや薄め程度のUネック、ミディアムサイズのフレット、2ハムバッカー、トレモロアーム。これが今の私の理想のギターだろう。
あれこれネットを嗅ぎ回ってみると、もちろんいくつもの魅力的な候補が出てくるのだが、当たり前のようにおよそ10万円コース。ま、値段も標準的、というよりは、かつての25万円が当たり前だったフェンダーUSAをいくつも持っていた身からすると、激安に見えた。

しかしなあ。
今の私に10万円のギター?
私はそれが許せない気持ちになっている自分に気が付いた。

今、かつて高校生だったおやじバンドは、間延びはしていても継続的に楽器屋さんの練習スタジオでがんがん音を出している。
再び誘ってくれたかつてのメンバーには感謝しきりだ。
みんな、これまで継続的に活動してきたのか、非常にウマい。私だけ取り残されていた感じだ。いや、そうではないのかもしれない。元々私の腕はそんなものだったのかもしれない。自分に驕っていた私はそれに気が付かないだけだったのかもしれない。

ま、しかし、そういうかつての気恥ずかしさも含めて、今はとても楽しめているので、年をとった私にはそれでいいのだ。

問題は、老朽化してくたびれてきた、現在のストラトだ。

リペアには丸ごと1本買うほどのお金がかかる。
希望通りの1本を買おうと思えば10万円。ちょっと、今の自分には過ぎている。
では・・・

そう。
そこで、振り返ってみたのがストラトという機種が、本当に自分の相棒として、今、これから残り何年か弾き続けていく自分に合っているのか、ということ。この先何年弾くかは分からないが。

本当は買い替えるつもりは無いのだった。もうこのストラトが我が下手糞ギター人生の最後を共にする1本で十分満足だ。
しかし、実際に演奏するのにヤバくなってきたこのストラトは、あともう少しだけ、ギターを弾き続けたい私の人生には、おそらく耐えてくれそうもない。
だからといって、かつてのように10万も20万も支出するのは、今の私には勿体無さ過ぎる。終の1本、と思えば、悔いのない金額を掛けた選択もあるとも思えるが、私はこれまでの人生でそうして選択した極上の一品が、本当に自分に合った満足したモノであった試しが無く、その極上の1本は使い難かったり、または遠慮なく使うには勿体無くて、結局セカンダリで買ったヘボい1本を使い続けていたりする。なんとも情けない人生だが、私の選択肢なんてそんなものなのかもしれない。

ならば、ストラトという煌びやかな名器より偏愛した己の目をそらし、ナルシシズム的な片思いの執着心は一旦自分から脱し、フィンガリングしやすいネックとフレット、ハムバッキングサウンド、トレモロアーム、そして自分に許せる廉価、という条件で、この人生最後の音楽活動の相棒を探そう、と思ったのだ。

探すのは簡単だった。
ネットで探せば出てくるわ出てくるわ、いくらでもある。
しかし、価格が強烈に安い。1万円代や2万円代なんて見切れないほど出てくる。
あまりにも安くてこりゃダメクォリティに間違いないだろう、と思ってしまうが、ユーザレビューを見てみると、案外しっかりした作りのものも驚くほど多いらしい。ステマや的外れな過大評価を疑ってみても、予想外にモノはいいらしい、と認めざるを得ないほどの品質と思える。
そこは、15年間も楽器屋に勤務していた自分の選択眼を信じたい。
ならば・・・うん。選んでみるか。私に合った終の1本を。

タイプはストラトタイプ。なぜなら私はロックな人だからだ。
・・・というか、ソコから大きく逸脱すると、私には弾けないギターになってしまうかも。これまでストラトしか弾いてこなかったんだし。
トレモロアームは必須。実はそれほど使用頻度は高くないのだが、なんとなくあれば安心感があるのだ。伝統的なシンクロナイズドでもフロイドローズでもいい。


PUは2ハムバッカー必須(HH)。憧れのハムバッキングサウンドが欲しい。私はピッキングが下手糞で、ストラトの3シングルであれば問題なく弾けるが、実はリアにハムバッカーが搭載されていると、PUにピッキングが当たり邪魔でしょうがない。しかし、これはかつてYAMAHAのSF-7000でも経験しているので、たぶんなんとかなるだろう。
が、ストラトの3シングルでもリッチー・ブラックモアよろしくセンターPUは下げていた。それも、ほぼ限界まで。ここは非常に邪魔になった(やっぱり下手なんだな)
つまり、PUレイアウトは、私にはHSHだと致命的になる恐れがある。HHならまだセンターは空いているものの、HSHだと真ん中に一番邪魔をするシングルコイルが鎮座していることになるのだ。


・・・と、ここまで自分の下手さを棚に上げて捲し立ててみたものの、考えてみればHSHでもセンターのシングルPUを下げてしまえば問題無いのではないだろうか。うん。そうだろう。
それに、実はこの下げたセンターを、実際のバンド演奏では結構使ったりしている。邪険にする割には見事に役に立ってくれているわけだ。リアとフロントに比べて限界まで下げたセンターPUは、出力も抑えられ、エフェクターの歪み系などもゴリ効きせず、バッキングにもってこいのサウンドになってくれる、というわけだ。

そう、PUレイアウトはHSHでもいいかもしれない。もちろん、HHでも問題無い。

さて、肝心のネックだ。
まず、外せない仕様としては標準のストラトよりは太いフレットであること。
ただし、ジャンボといわれるほど太くなくてもいい。ミディアムくらいでも十分だ。


指板のアールはやや緩め。これは、今のギターはビンテージモデルを除いてフラット目の指板が多いので、問題無いだろう。
できればメイプル以外のフィンガーボード(指板)がいい。そして、出来ればバインディングは無いほうがいい。ただ、これらは必須条件ではなくても良さそうだ。


ネックの形状は太過ぎないU字。ビンテージモデルではとんでもないぶっといU字や掌が痛い三角木馬があるので、こういうのはダメ。
そして、出来ればミディアムスケール・・・といきたいところだが、これは実は悩みどころかもしれない。
ミディアムスケールは、テンションが弱く、フィンガリングに気を付けないと音程が不安定になってしまう。特に太いフレットの場合はこれが顕著で、チョーキングのやりやすさとは裏腹に意外に弾き難いテンションだったりする。
おまけに、サスティンに不利。張弦が弱いので、特にトレモロアームではロングサスティンが得難かったりする。
でもなあ。弾きやすいんだよなあ。特にチョーキングが。悩ましいが、あまり拘り過ぎなくてもいいのかもしれない。

そうすると、IbanezのGRG170DXなんてギターが出てきたりする。お、これいいな。
もうひとつ、GRX20なんていう1万7千円のHHのモデルがある。衝撃的な安さだ。が、ブリッジの6本ネジの配置がちょっとキモかったりして、悩んでしまう。
GRG170DXは2万6千円。これまた衝撃的な激安価格だが、レビューの評判は思ったよりかなり良い。
HSHか・・・うーん、やっぱりセンターPUがなあ。下げちゃえばいいかなあ。
24フレットかあ。ということは、24フレット目にフロントPUが無いことになり、弦の振動周期の1/4位置にPUが無いことを意味する・・・なんてね。昔、リペアショップ担当だった頃の知識。弾いてるときは解放弦なんてほとんど使わないわけだしね。それよりも、21Fのストラトに慣れていると、22Fでも目が泳いじゃったりするのに、24Fなんて「あれ?あれ?」なんてことにならないのだろうか。


下手は下手なりに、このように色々と考えることは多いのだが、引退間近の我がストラトと交代するには、まさにちょうどいいギターではないだろうか。

ということで、長年付き合ってきたストラトはとてもお疲れの様子なので、フレッシュな新人を迎えます。
そんなに凄い奴ってわけじゃないけど、今の、これからしばらくの自分には合ってるんじゃないかな、と思う。
フィンガリングやピッキングはもちろん、エフェクターのセッティングなど、色々と矯正していかないといけないだろうけど、おそらく辛いくらいの負担にはならないだろう。この変化を楽しめるくらいの機種変更だと思う。


よろしく。Ibanez GRG170DX。
Amazonから今日到着した。

4 件のコメント:

  1. こんにちは壱号さま^^ お独り様ノ焚き火です。
    終の一本で ibanez^^ てっきりストラトかと思ってましたが
    そのうち もう一本 至極のストラトが記事に見えてくるのかな。
    なんてね。
    小生も FenderJapan 1989年のが 埃だらけで眠ってます、
    Ibanezは 1986年のRb824が これまた埃だらけで眠ってます
    ギター弾きではない小生ですが KyairiのCE-3 エレガットなんてのも
    あります。
    これは 小生の終ノ1本になりそうです。
    バンドは ええですなぁ ROCKは ええです。

    学生から還暦まで 数バンドで秋に新宿で
    お祭りLIVEやってます、ジャンルも上手い下手も問わずに
    音楽楽しもうって感じで 「第四回山田祭り」で検索してみて
    気が向いたら 参戦宜しくお願い致します。



    返信削除
    返信
    1. どもです、zani様。
      土日で弾き込んでみました。予想通りのじゃじゃ馬(笑)
      ほぼ何もかも予想通り、って感じでした。あまりサスティン伸びないし。
      でも、やっぱりハムバッカーにして正解でした。太いフレットもいい感じ。
      バンドで扱うので重量が心配でしたが、バスウッドでなかなか軽くていい感じです。その分、ボディ鳴りはしないのですが。
      ストラトライクなボディで持った感じに違和感は無いのですが、ネックの位置がストラトよりやや上気味なので、24Fもあいまってスケール位置を間違えやすいです。フレットのインレイがでかくてチョーキングやビブラートの邪魔だし。

      まあ、予想通りに安いギターなのですが、かつての常識からすると5万円代のクォリティといってもいいかもしれません。
      自分にはちょうどいい感じです。

      RB824、懐かしいですねー。お、K-Yairiもあるんですね。

      おやじバンドはなかなかみんなの予定が合わなくて苦労してます。
      レパートリーは、U2、The Police、Queen、Foreigner、エアロスミス、などなど雑食です。

      機会がありましたら。
      では(*´ω`*)

      削除
  2. お久し振りです。
    複数の音が出る楽器は全く扱えない私からすると羨ましい限りでございまする。

    所で、退役したフェンダーはどうなったのでしょうか?
    しめ縄付けて床の間に飾られてるのか、はたまたステージモニターにフルスイングされてライトの塵と消えたのか、ジミヘン張りにささやかなファイヤーを灯したのか…気になります。

    ちなみに、我が家にはセルマーのアルトサックスと、ヤマハのふるーいトロンボーンが死蔵されておりまする。

    楽器ってどうしても捨てられないんですよね…。

    返信削除
    返信
    1. どもー、さかつばさん。SNSでのせいか、久しぶりの気がしませんw
      ( ´ー`)ノ

      ストラトは中毒症状が出た時のためにとっておいています。
      あまり状態が良くないので、うーん、って感じですが。
      売ったり譲ったり捨てたりは考えられないですね・・・

      かつて、ギターはエレキもアコギも含めて20本以上、シンセやエレピ数台、MIDI音源10数台、ミキサーは24トラックを2台、MachintoshでDTM、リバーブ等音響機材10数台、ドラムセット、という、おそらく数百万円ほどの楽器や機材類を所有していました。あ、8トラックレコーダーもあったっけ。
      その最後の山は私の奥様が目撃しているのですが、結婚してじきに件のストラトとYoutubeに挙げた安ーいアコギを残して全てかつての職場である楽器店に売り払いました。

      まさか、またバンドやるとは思ってませんでした。人生なにがあるかわかりません。不思議です。

      ああ、そうだ。MIYAZAKIの30万円くらいのフルートも持ってました。銀管です。ちゃんと吹けますw
      SAXもちょっとだけ吹けました。
      が、金管は全滅。マウピーすら唇に当てたことがありません・・・ブブゼラ吹けると楽しそうですがねー。

      やっぱりアンプで鳴らせるハードロックギターは幸せです。
      では。
      (*´ω`*)

      削除