2019年10月26日土曜日

5_剱岳 剱沢キャンプ場 ~ 帰路

2019年8月7日~8日

13時50分
キャンプ場の我が家であるシェルターにたどり着いた。雨はまだ本降りのままだ。
念のためにとファスナーにかけておいた小さなダイヤル南京錠を開錠する。
カッパを脱ぐ。このずぶ濡れカッパ用の大きなポリ袋もあったほうが便利だった。
ザックごとレインジャケットを羽織っていたので、ザックは濡れていない。シェルターに放り込む。
濡れたカッパ上下はやむなく外の張り綱にプラSカンで引っ掛けておいた。後で乾かそう。
シェルターに潜り込み、登山靴を脱いで、でかポリ袋へ入れ、シェルター内に。
シェルターの入口を閉じる。


ほっとした?達成感?
爆発的な喜びみたいなものはやって来ず、穏やかな満足で眠くなる。
が、その前に、シェルター内の水分を少しでも拭き取っておく。
前々回の水没があるので、過剰に反応しているのかもしれないが、不安要素は対処しておいたほうが気が休まる。
それほど、持ち込んだ水分は無かった。
リッジレストのでこぼこ銀マットに横になると、自然に眠ってしまった。

○○時○○分
外を歩き回る人々の声で目が覚めた。雨は上がったようだ。
ごそごそとシェルターから出る。陽が出ている。日没までは少し時間がありそうだ。
色々なものを今のうちに干して乾かそう。

と、西の稜線に虹がうっすらかかっていた。しかもまたダブルレインボー。Goproを向けてみたが、映っているだろうか。写っていませんでした(´・ω・`)
ツェルトのガイラインや予備の細引きを使い、三脚を伸ばして高さを上げ、レインウェアやザック、シェルター下のトミカシートを干す。靴下やアームガードなど細かいものもついでに干す。

いろいろ干す

傍らの大きな岩に座ったり寝転がったりして時間をつぶす。

だんだん陽が落ちていく。穏やかな時間だ。
目の前に剱岳の威容が座っている。自分が辿った登山路をこの遠望から眺めてみても、恐ろしくなるような山容をしている。

やがて陽が落ちた。山の影に隠れた。
干してあった色々なものは、完全には乾いていないかもしれないが、十分には乾いただろう。
トミカシートをシェルター下に滑り込ませ、アイテムはそれぞれ元の居場所に戻した。

少しづつ、暗くなってきている。夕飯にしようか。
正直、食欲は無い。が、激しい運動の後だし、明日は明日で登りと下りを経て帰らなくてはならない。
いつも通り、クッカーにお米を入れて吸水させておく。

トイレに行ったり、水を汲んできたり、帰り支度をしたりしているうちに吸水タイム終了。
では固形燃料に火を付けて・・・と準備をしていたら、

* * * * *
19時10分

シェルターのすぐ外から声を掛けられた。

警「すいません、お休みのところ」
壱「はい」
警「山岳警備隊なんですけど」
壱「はい?」
警「ちょっと、あのー、今日、どちら行かれたか・・・」
壱「剱岳・・」
警「あ、本峰」
壱「はい」
警(〇※&△¥)
警2($#〇+ですかね)
警(ま、どこでもいいんですけど) (´・ω・`)?え?
 「あの、何時ごろ、本峰の山頂、行かれましたかね」
壱「山頂ですか?」
警「山頂、大体、時間・・・」
壱「あ、えーと、ね、書いてあるんで・・・」
壱「えーっと、あ、これ大菩薩・・・、えーっと、9時5x(じゃない)、9時33分です」
警「あー、了解しました」
壱「はい?」
警「なんか、11時・・半くらいに、その、”道迷い”みたいな感じで、」
壱「11時・・・」
警「そういうのが、まあ、その、あったっぽくて、」
壱「はい・・・」
警「ガス出て(道が)よう分かんない、みたいな」
壱「はい」
警「なんで、その、11半前後に、もし本峰、」
壱「はい」
警「行かれてたら、ちょっと、こういう男性みなかったですか、って、今、聞こうとしたところで」
壱「あー・・・、なるほど・・・」
警「ちょっと、お話、聞かせていただきました。9時台なら・・・」
壱「そういえば登ってった人が・・・」
警「あ、でも、早月尾根から来てるんで、たぶん、別山尾根から登り返して、登ってくるってことは無いと思うんで」
壱「あ、じゃあ、違いますね」
警「あ、ありがとうございました」
壱「あ、いえいえ・・・・」

後日、ニュースを見たら、単独で早月尾根から登り、剱沢方面へ向かう予定が、途中で家族に電話で「道に迷って方向が分からない」と連絡があったそうです。
その方は滑落されて、亡くなられたとニュースにありました。

同じ山に同じ日、同じ時間帯に登山した自分として、心よりご冥福をお祈りします。

* * * * *

お米を炊く。
結局、固形燃料は数がぎりぎりだった。火力を得るために余計に使ったためだった。
クッカーで炊き、蒸らし、その時間に缶詰をマグカップで温め、いつも通り、ご飯、さんまのかば焼き缶詰、味噌汁の夕飯。
代わり映えが無いが、美味しくいただけるメニューだ。
・・・とはいえ、繰り返し過ぎているので、少々飽きてきた。
これは、食糧計画にも改革が必要な時期に来ているのだろう。


スキットルのバーボンは飲まなかった。
なぜか、お酒が欲しくならない。
ついでに言えば、ご飯は食べたものの、食欲は無かった。エネルギー補給を意識に刻み込んで食べた。

結局、スキットルは3分の1ほどと、別に持ってきた200mlのアーリータイムスが丸々余って持って帰った。
こんなこともあるんだなあ。

21時30分
その夜は、お酒も飲まず、イヤホンで音楽も聞かず、同じ登山者達の声やクッカーの音を聞きながら、直に眠ってしまった。
いつもは寝つきの悪い自分だが、さすがに疲れていたのだろう。
夜は12度まで冷えたらしいが、モンベルダウンハガー#5とシュラフカバーで、寒いとは全く感じなかった。

8月8日
AM 3時45分
やはり周囲の人々が活動を始める音で目が覚めた。
が、今日は早く出立する予定は無い。色々な登山者が出す音を聞きながらうとうとしていた。

空が若干白んできただろうか。
もう起きようか。

さて、帰りはいくらか登り、そして長い急な下りになる。しっかりエネルギー補給をしなくては。
4日も山にいるので、体も相当消耗しているだろう。
ということで、もし食欲がなかったらと思い、変化をつけて「マルちゃんのワンタンスープ」を最後に用意してきた。常温保存もOKな優れものだ。
これなら大丈夫だろう。
作り方も簡単。お湯を沸かしてワンタンとスープを入れるだけ。

常温で持ち歩けるマルちゃんのワンタンスープ

いただきます。
・・・うんうん。美味しい。大正解。

どうも自分にとっては「飽きる」という困った問題がつきまとうようなので、食糧計画はもっと考えなくてはダメだろう。
全食カロリーメイトとかアルファ米雑炊とか、凄い人もいるようだが、飽きて食べられなくのは即エネルギー不足に直結するので、自分はもう少し工夫しなくてはいけないようだ。
楽しみでもあり、面倒でもある。

では撤収しよう。

撤収

天気は幸い晴れている。まずは大雑把にスタッフバッグなどに分けて、次々と外に出し、周辺の大きな平たい岩に載せていく。
ザックも出す。ヴァーガはペラペラの1枚筒なので、リッジレストを丸めてフレーム代わりにするので、ちょっとパッキングは面倒だ。
全部追い出したところでシェルターを畳む。
ヴァーガにリッジレストを丸めて入れ、まずは45Lの防水バッグ。底のほうにはシュラフカバーとエア枕、そしてシュラフ。シュラフに包まれるようにヘルメット。ヘルメットの中に・・・何を入れたっけ?何か、この隙間に突っ込んだ気が。・・・ああ、そうか。スキットルとバーボンのペットボトルだった。
ヘルメットは縦にして、来る時より若干背を高くパッキングした。そのほうがザックが軽く感じられるのだ。
往路は10.6kg。ところが、帰宅してそのまま体重計にザックを乗せてみたら9.8kgだった。
おそらく家族と会社へのおみやげで嵩増しされたのだろうが、驚いたのは往路とほとんど変わらないザック重量なのに「さすがに帰路はザックが軽いな」と感じていたことだ。
体がこの重量に慣れてしまったのかもしれない。

さて、荷造りできた。
目の前の剱岳を振り返る。相変わらずの威容だ。

AM 7時20分
さあ、行こう。帰ろう。

さらば剱沢、さらば剱岳

復路は剱沢⇒剱御前小舎⇒雷鳥沢⇒室堂、つまり来た道と同じだ。
様子が分かっているので、ずいぶん気が楽だ。
その分、疲れた体を意識して慎重に歩けるだろう。

まずは剱御前小舎までの登りだ。斜度はそんなでもない。足元は若干ゴロゴロしてて悪いが、それほど苦にはならなかった。

何度も何度も剱岳を振り返る。少しづつ、遠ざかっていく。

AM 8時17分
剱御前小舎を通過。休憩は必要を感じず、通り過ぎた。ここで、剱岳は見えなくなる。

そして、雷鳥沢までの長い下りを降りていく。
慎重に、腿とふくらはぎの筋肉を使って、膝を痛めないように。
歩き出してしばらくすると、特に登りでは腿の付け根やどちらかの膝が僅かに痛むことがあるが、過剰に心配はしなくなった。変に庇って変な歩き方をすると、そのほうが変なところの筋肉に過剰な負担をかけることがある。
いつも通り、意識してゆっくり歩き続ければ問題ない。

立山は素晴らしい

特に下りは膝に衝撃を極力与えないように筋肉をサスペンションにして歩き続ける。
この筋肉サスペンションを意識せずに、足を突っかい棒にして下ると、たちまち膝を痛める。軟骨に衝撃を与え続けるからだ。

剱御前小舎を越すと目の前は大きく開け、雷鳥沢や室堂が見渡せる。
少しづつ近づいてくる雷鳥沢を見ながら、ゆっくり下っていく。

AM 9時41分
雷鳥沢キャンプ場に到着。ベンチを借りて、お帰りモードに変更する。
財布やイヤホン、モバイルバッテリーなどをサコッシュに入れ、逆に地図、行動食などはザックに仕舞う。
プラティパスからドリンクホルダーのペットボトルに水を補充。雷鳥沢からの登りは結構しんどいので、かなり消費するだろう。

AM 9時55分、出発。
ここからは登山者のみのエリアではなく、軽装の観光客も増える。迷惑にならないように歩こう。

それにしても、雷鳥沢からの登りはキツイ。ずーーっと階段なだけに、余計にきつい。
延々と登っていく。

そういえば、今回は雷鳥に合わなかった。両キャンプ地で、そこここに声は聞こえていた。
やはり人が多いので、出てこなかったのだろうか。

AM 10時40分
地獄谷、ミクリガ池を通り越し、室堂に着いた。

室堂に帰ってきた

ここで最後にペットボトルの残った水を捨て、ドリンクホルダーも畳んでザックの中、Goproも外してザックに仕舞う。
そして大勢の観光客に紛れて帰路についた。

帰りはちょっと贅沢をして、JR中央線特急のあずさで帰る。

帰宅してとりあえずザックはそのままにして、風呂に入ってご飯を食べて寝る。
翌日、荷をほどいて、色々とお手入れ。
モンベル・トレントフライヤーレインウェアはクソ高いカッパなので、ぬるま湯で洗い陰干しした。
ザックのグラナイトギア・ヴァーガとアタックザックのスラッカーパッカーもぬるま湯で洗う。
ULドームシェルターは組み立ててウッドデッキで乾かし、入口庇の穴をリペアシートで塞いだ。
シュラフは日光でふとん干し。
あとはひたすら食器洗いやその他もろもろ。いつもの手順で片付け、次の出番を待つ。

お土産は少々小さ目だが、ぎりぎり登山ザックに収まるくらいだったので勘弁してもらおう。

剱岳への挑戦は一段落したのだった。

3 件のコメント:

  1. 壱号センパイ!
    【剱岳編】YouTube/ブログ完走お疲れさまでした!
    楽しく見させて頂きましたありがとうございます!
    次回はどこへ行かれるんでしょうか?(^^)
    話は変わって奥多摩の帝王の壱号センパイにお聞きしたのですが
    雲取山は毎年いつ頃雪山になりますでしょうか?(12月~1月?)
    雪が積もったらクロスオーバードーム持って
    行こうかと思ってるんですが先輩も行きませんか?(*´∀`*)

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  2. こんにちは~(*´ω`*)
    雲取山はせいぜい年に1~2度だと思います。すぐ溶けちゃうので、なかなかスノーハイクにならないです・・・。
    自分も2013年末に本格的な雪中ツェルト泊やって以来、奥多摩の雪は経験してないですねー。
    ちょっと今、私事が立て込んでてなかなか色々なことが出来なくて・・・(´・ω・`)
    落ち着いたらまた計画しようと思ってます。
    ( ´ー`)ノ

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