【ウルトラライトで行く】MTB&ソロキャンプ⑥ 1.アプローチ&ダウンヒル編
【ウルトラライトで行く】MTB&ソロキャンプ⑥ 3.キャンプ編
【ウルトラライトで行く】MTB&ソロキャンプ⑥ 4.朝食&脱出編
2017年4月14日 - 15日
どうせULでやるなら、ということで、ザック重量は7kg未満としてパッキングを工夫してみた。
まず、ベースウェイト。
もちろん、詰め込む道具はプラのSカンやツェルトのガイラインまで全て実測してある。
巷では徹底したULを目指す者のことを「gram-cutter(グラム・カッター)」と言うそうだが、なんだかバカにされているのだろうか。まあいい。その通りだ。シュラフの収納袋を省略すれば21g減る。そういう積み重ねが、11kgの1泊キャンプのザックを6kg台にまで落とすことが可能になるのだ。
(ただし今回シュラフは収納袋に入れていった。パッキングの収まりがどうにも悪かったので、ザック内の整理優先にした)
結果、BWは2,642g。
ザックはGRANITEGEAR SLACKER PACKER COMPRESSION DRYSACK。25L。いわゆるアタックザックといわれるサブザックで、たったの157gしかない。SLACKER PACKERとは、あなたを怠け者にするくらいラクなザック、という意味らしい。
ちなみにこのザックは防水なので、ザックカバー等は不要なのも軽量化に寄与している。
水、2L=2,000g。やはりこれは重いが、省略不可能。しかも、2Lではぎりぎり過ぎて、朝のコーヒー1杯を我慢してきた。反省。
キャンプ場や登山の場合は現地あるいは途中で水の補給が可能な場合が多い。例えば登山であれば水場までの道程で必要と思われる量(大抵1L程度)があればいい。しかし、何の設備も無く水場も無い完全な野宿の場合、あらかじめ全行程に必要な量を担ぐしかない。途中で湧き水などがあっても飲めるかどうか分からない。上方あるいは近くにゴルフ場などがあった日にゃ、まず間違いなく農薬だらけと思ったほうがいい。野生動物の糞や死骸その他で流水や湧き水が汚染されている場合もあるので、確認された水場以外は使わないほうが無難だ。
食料や燃料等の消耗品、1,208g。こうしてみると、意外に重い。装備はかなり限界に近づいているので、工夫するとすればここしかないかもしれない。
それでもかなり大胆に絞ったほうだ。
ここまでであれば、5,850gで済んでいる。
しかし、これに撮影機材等が入る。これが1,145g。
Gopro HERO5 Blackのバッテリーは計3個。1日の終わりに再充電して、これでぎりぎりだった。もちろん、モバイル用バッテリーも携帯。これはSONY製の15,000mAhのデカイもので、392gと重いが、Gopro用、スマホ、スマートウォッチ(意外に使えなかった)などの充電に心強い味方だった。
で、総重量は6,995g。体重計計測では6.8kgだった。
今回の軽量化の秘密は、ESBIT。やはりULを目指すと、ここに行き着くのだろうか。
今回はMTB&ソロキャンプ。久しぶりに走りたかったし、これほどの軽量であればMTBでなければもったいない。
しかし、八王子の林道は、多くが一般車両進入禁止、つまり自転車もダメだ。わざわざタテカン(立て看板)に「自転車を含む」なんて書かれちゃってる。
webで情報を探しても、やはりどこもかしこも進入禁止。
ならば、と、以前によく探索した「地図に無い道」に行ってみることにした。
恥をバラせば、これは国土地理院2万5千分の1地形図の「町村・政令市の区界」線を、私は徒歩道と勘違いして、とんでもない獣道や杣道にMTBで入り込み、ほぼ垂直の崖をMTBを引きずってよじ登ったりしたわけだが、一部、送電線巡視路も通ったりする。
いずれも国土地理院地形図に記載の無い道で、季節によって、特に夏場は雑草やツタなどで荒れ放題に荒れてしまうので、ほとんど入ってくる人はいない。もちろん、水場やトイレはおろか、なんの設備も道標も無い。地形図を見て辿れそうな傾斜や尾根などを判断するのだ。到底前進の無理な箇所も多々ある。
さて、有給休暇を取って平日の午前、久しぶりにTREKを引っ張り出して走り出す。
さすがにザックが軽い。
Goproはアウトドア活動実戦ではこれが初参戦だ。ハンドルにダイレクトにマウントしてみた。
ところが、舗装路を走り出してみると、撮影中は全く気がつかなかったが、家に帰ってヘッドホンで再生してみて、ものすごい野太いロードノイズが耳を聾した。もちろんこれは26x2.1もの太さのオフロードタイヤのせいだ。
ちょっと驚いた。
現地に着き、まずは自転車の保安部品を外す。ベルと後方反射板だ。以前はサイクルコンピュータを付けていたこともあった。
ところが、激しいMTBライドをやると、転倒などした際、時としてこれらが凶器の破片となってすっとんでくる。スタンドなどもってのほかで、土面に突き刺さって土手からMTBごと放り出されることすらある。私はこれでサイクルコンピュータを1個紛失している。
というわけで、ヤバそうな部品は外してしまうのだ。
そして、今回webで知ったハッカ油の登場。
去年の7月、鷹ノ巣山の避難小屋前ツェルト泊でブヨに30箇所以上食われまくった痕がまだ残っている。まだ痒みの残るところもあるくらいで、もう金輪際ごめんだ。
そこで、ブヨに有効といわれるハッカ油スプレーを自作してみた。
10mlの消毒用エタノールにハッカ油を15滴くらい(適当)。無水エタノールが本来らしいが、薬事法の関係で割高だそうだ。ハッカ油は水に溶けないので、エタノールで融解させるということらしい。それに、精製水40ml(水道水でも良いらしい)を100均の50mlスプレー容器に入れて出来上がり。
分量はアバウトでいいそうなので、ちょっと濃い目にしてみた。それなりにスースーする。
効いたのかどうか、ブヨの所在が不明なので分からないが、とにかく今回は食われなくで済んだ。1回のスプレーで1時間以上効果は持続するらしいが、50mlなんてこんなに大量に持っていかなくていいんじゃないかと思ったが、案外使った。残り1割程度しか残らず、行程によってはもう少し大きい容器(100均!)でもいいかもしれない。虫除けハッカスプレーを製品で買うと1400円くらいするので、作っちゃったほうが分量もスースー具合も自由にできていいかもしれない。ハッカ油500円、消毒用エタノール(500ml)300円、精製水100円で出来る。
さて、では突入。
地図に無いシングルトラックに踏み込む。まずは15度以上もあろうかという坂だ。一部は30度近く、坂というより土手の斜面か?もちろんほとんど手入れもされていないような土道なので、非常に足場が悪い。
100mほどの登りだが、おっさんのハアハアが止まらない。ようやく送電鉄塔に着いて、ちょっと休む。
そして平場から乗車。林間の涼しいシングルトラックを軽快に走る。
人の通らない土道に桜の花びらが絨毯のように散りばめられている。まるでご褒美のようだ。
・・・まあ、そう長い距離は乗車で走れない。じきに登坂困難な上り坂が現れる。もちろん、足場も相当にキビシイ。
今日はこれが連続するだろうから、余計な体力を使わないよう、すぐに降りて押す。
と、行き先の不確かな藪になった。いくつかの踏み跡らしき細い獣道しかない。まず地形図を確認。スマホの地図ロイド(無料)で簡単に現在地と地形図を確認出来る。
が、念のため、紙の地形図も持ってきている。電子機器が使えなくなった場合最後の砦だから、私は紙地図とコンパスを手放さない。ガーミンのGPSを持って同様のアソビに出掛けた際、対象地形図区域をインストールし忘れて現地で気がついたときは真っ青だった・・・
ちょっと偵察に出る。歩いてその先を確認してみた。
この場所は広大な山林地域というわけではないので、ちゃんと確認しないと、ゴルフ場に出てしまったり、市街に降りてしまったりする。
きちんとさ迷い続けられる方向を確認しながら前進する。
・・・なかなか激しく急な下りが続いている。一部は脳天逆落としに近い。
が、まあ、私の選択肢なのだから、本格的なドロップオフなんて、私の腕前では無理。
大人しく頑張って降りられそうなコースを探す。
とはいっても、相当怖かった。
そういえば、Gopro HERO5 Blackは3つのマイクが内臓されていて、ステレオ録音可能だが、ウェアラブルでヘルメットマウントにしていて、張り出した小枝にヒットすると、相当耳に堪えるヒット音になる。
それに風切り音にも弱い・・・かも?ノイズは低減される工夫になっているらしいが、今回ひととおり撮ってきてみて感じたのは、いずれも弱いかも、という印象だった。
過大な期待はしないが、自転車通勤の復路の夜に撮影してみて、HERO3と違い暗い場面も十分きれいに撮れるので、活躍してもらいたい。
さて恐怖の下りをなんとか下り切って、小さな流れのそばに出た。
ここでお昼にしよう。
今回はESBIT固形燃料、それに固形燃料をちょこんと乗せて使う極小のESBITチタニウムストーブのみ。
実は、ESBITを実戦で使うのは初めて。家で子供の花火に使用したくらいしか経験が無い(買ってみたものの、アウトドアではガスストーブやガソリンストーブをメインで使っていたためESBITは使う気にならず、死蔵させていた)。さて、その使い心地はどうだろうか。
着火はいつも通りマッチだが、火が着きづらい、との情報もあったので、たれビンにアルコール燃料を5mlだけ持ってきた。
ビニール製のたれビンにアルコール燃料を入れた場合、万が一、たれビンが溶けて漏れてしまうとイヤなので、一週間、たれビンに入れっぱなしにして様子を見てOKを出した。
小さな谷を風が吹き抜けていく。気持ちがいいが、着火にはどうだろうか。
・・・が、特に問題なく着火した。コツは面の部分にマッチの火を当てるのではなく、辺の部分に着火させるといいっぽい。直方体の角(コーナー部分)だと火に晒す面積が少なくて着き難い様子だった。
その後もやはり風の吹く丘で使ったが、アルコール燃料はあれば確かに一発着火だが、無くても特に問題無いようだ。
いよいよ着き難いときの保険用にあったほうがいいかもしれない。
チタニウムのゴトクの周りを風防で覆う。この風防は、100均のパウンドケーキ用アルミホイル型の底を切り抜いたもの。厚めのアルミホイルというだけなので、畳んでクッカーの中に納まる。
Youtubeの色々な方の動画より、ESBITはスタンダードサイズが3個で沸騰出来る熱量が得られるようだ。2個だと室温程度でも風防が無いと相当キビシイらしい。
新品のEPIチタンクッカーに水を注ぎ、火に掛ける。さすがに安定が悪い。が、なんとか乗っかっていてくれている。ほどなく沸騰した。
ESBITはクッカーを下ろした後で勢い良く息を吹き付ければ消える。燃え残りのESBITは次回にそのまま使えるから便利。
クッカーで沸かしたお湯にカップヌードルカレーのリフィルを入れ、3分間。
うーん、この至福の時。
少し強めの風が気持ちいい。頭上から小さな木の実がばらばらと降り注ぐが気にしてはいけない。場所をお借りしているのは私なので、大人しく木の実シャワーに甘んじる。
コーヒーも飲んでいこう。
さて、一息ついたら出発。
ここからは、押し登り7割、乗車が3割くらいだろう。
とりあえずシングルトラック程度の道はあってくれているのが助かる。
どのみち地図に徒歩道、登山道などの無いエリアなので、尾根っぽいところを地形図を見ながら進んでいく。
MTBを降りて地形図を読み、偵察して行けそうか確認して、戻って乗って、の繰り返し。
ギアをへろへろにして頑張って登れそうなところも、なるべく体力を温存するため極力降りて押す。藪漕ぎになったり、30度もある急斜面をMTB(12kg)を引きずってよじ登ったりする場合もあるので、余計な疲労は負わないに限る。体力や握力もそうだが、気力がくじける事もあり、どのみち単独行なのでくじけたって誰も助けちゃくれない。
全てを自力で解決するしかないのだ。全ての行動の責任を自分が負う。それがソロの魅力だ。
そろそろ一夜の宿を探そう。
ここまで全く人気はないので、どこでもいいだろう。
相変わらず地形図を見ながら予定している脱出ポイントに向かって進む。
と、ちょっとコースから外れるが、送電鉄塔がある。
人工物は若干雰囲気を損ねるが、眺めは良さそうだ。行ってみよう。
乗ったり、押したり、撮影したり。
今回、本格的にGopro HERO5 Blackを投入し、ヘルメットマウントなどのウェアラブルでの使用以外にも、三脚を立てての撮影にも使用してみた。
こまめに電池を節約すればそれなりにバッテリーはもってくれるらしい。記録ファイルはかなり大きくなるので、64GBのmicroSDは結構容量を消費する。今回は一部をスマホで撮影したが、ほぼGoproで撮り、64GBを1枚と、32GBを1/4くらいの容量を使った。
そうこうしているうちに、鉄塔についた。
想像とおり、景色はかなりいい。刈り払われた丘にあるので、風が気持ちいい。
山桜?が最後の花を咲かせている。きれいだ。
ゴルフ場がかなり近くにあり、しかもグリーンがあるらしく、オジサンたちの嬌声も聞こえてくる。まあよかろう。どのみち夜は静かになるし。
今日はここに宿を借りよう。
とりあえずツェルトを張ってしまおう。
今回は限界に近い軽量化をしてきたので、いつものトミカのピクニックシートも無い。
地面には駆られた草木の茎が広く残っていて、慎重に場所を選ばないと簡単に底面に穴が空く。
ポールなどの支柱も持ってきていないので、適当な枝木を探しに行く。
やたら太い枝は必要無い。体重をかけたりはしないので、ガイラインにテンションをかけた際にぽっきり折れなければいい。まあ、そうはいってもそんなに都合良くちょうどいい枝木は落ちてたりはしないので、あちこち探して使えそうなのを2本拾ってきた。
風が強い。
まずはセオリー通りに底面4隅をペグダウンする。もちろんハンマーなども持ってきていない。適当な石をそこらへんから・・・と思ったが、意外にそこらへんに適当な大きさの石がなく、探し回ってしまった。
そして、いざペグを打ってみると、刈られ残った茎が竹槍トラップのように無数にあり、打ち難いったらありゃしない。案の定、手のひらをぶっ刺して流血。携行しているファーストエイドから香水スプレーびんに入れたマキロンで傷口を洗った。
枝木を使ってツェルトを立てる。ちょっと不恰好で、ガイラインの中心を少し上に伸ばして調整したら、自分のツェルト歴代トップなくらいカッコ良く張れた。
コーヒーでも飲むか。
陽は傾きかけているが、さえぎるものが無く、直射日光に晒されていると暑い。
太い鉄柱の影を利用して、お茶の座を設ける。が、当然陽の傾きと共に移動しなくてはならない。ここでは他に日陰は無いので、まあしょうがないだろう。
風は強いが、ESBITにタレびんのアルコールをちょっと垂らしてマッチで着火。
フニャフニャのアルミホイル風防でがっちり覆ってやったおかげで湯はほどなくして沸騰した。
Goproで雲の動きをタイムラプスで撮影してみる。どのくらいの間隔で設定していいのか分からないので、とりあえず10秒間隔にしてみた。
・・・ちょっと頭の中で計算してみた。
10秒間隔⇒1分に6枚、つまり6フレーム⇒10秒の動画にするには1秒/30フレーム(つまり30fps)だから、50分間の撮影。
Oh、そんなにかかるのか。
バッテリーがもつかどうか分からないので、モバイルバッテリーにつないだままにしてみる。GoproのUSB口の小パネルを外す。後で着ける時に分からなくて苦労した。そのまま三脚に固定して50分間放ったらかし。
そういえば、Goproバッテリーの充電は今回は本体装着のままUSBからしか出来無い。別売りの充電ボックスもあるが、買わなかった。予備も含めて計3個あるので、とりあえずは足りる感じだが、さすがにちょっと不便。
ぼんやりしてたり、うたたねしているうちに日も暮れてきた。
ツェルトにやどかりで夕飯にする。
今回の目玉チャレンジのひとつは、チタンクッカーでの炊飯。
私の選択したEPIのクッカーは、底にアルミ溶着などを施していない、タダのチタン製。
その分軽いが、もちろん焦げ付きなどにはひとたまりもないだろう。
そのチタンで、米が炊けるか。
米そものは昼に1合を250mlポリビンに移し、水を注いで吸水させておいた。5~6時間ほども経っただろうか。通常は1時間ほどでいい(ちなみに、私はいつも研いでいない)
家にあった秋田こまちをそのまま持ってきている。まあ、私はいつもフツーの家庭用の米がほとんどだ。
十分に吸水した米をクッカーにあけ、水を注ぐ。水の量は適当。本当に適当で、まるで計ってない。米表面から1~2cm程度だったような気がする。
ESBITは2個+燃え残り半個程度。点火。沸騰するまでフタをして、沸騰したらフタは外してしまう。
これは、シェラカップでの炊飯と同じ方法だ。上手くいくかどうかわからないが、とりあえずこれでやってみる。
沸騰して水分が飛び、米の表面が湯面から出てきた。ここで念のため多少箸で攪拌してみた。そして、フタをする。
フタの縁から湯気が噴出す。と、ここでアクシデントが起きた。ESBITが燃え尽きてしまったのだ。これは想定外。1合の米を炊き切るにはESBITのスタンダードサイズ2個半では足りなかったようだ。
とりあえずクッカーを下ろして、ESBITを2個追加。クッカーには若干水を足して、もう一度火に掛けた。
少しして再び沸騰が始まる。縁から湯気が噴出す。音を聞いていると、やがてちりちりといった音が混じり変化した。大事をとってここで火から下ろした。
タオルに包み、スマホを30分タイマーにして、ツェルトの中のシュラフにくるんでしまう。こうすれば保温もばっちり。気になる人は念のためシュラフカバーをした上で包んだほうがいいだろう。
後は待つだけだ。
さて、今の時点で缶詰を暖めたり味噌汁を作ったり(FDでお湯を注ぐだけ)すると、米の蒸らしが終わる前に冷え切ってしまう。ESBITでの湯沸しは3~4分、いやそれ以上かかるから、だいたい10分前くらいにおかずと汁物の準備を始めればぴったりくらいだろう。
ちょっと外に出てみて、星空のタイムラプスでも撮ろうか、と夜空を見上げてみたが、はずれとはいえさすが東京都、数えるくらいの星しか見えていない。
これじゃあなあ、と今回は撮らないことにしたが、後でGoproのマニュアルを読んでみたら、『夜間の星、天の川 (真っ暗闇)』という設定もあるらしい。今度試してみよう。
そうこうしているうちに、10分前。再びESBITに点火。
クッカーのフタを取り、本体はタオルをフタ代わりにして、再びシュラフで包む。
フタに缶詰を乗せ、水を注ぐ。縦長のサンマ蒲焼缶なので、ナナメになってしまうが、まあ温めるだけなのでいいだろう。
と!安定しないESBITチタニウムストーブから缶詰と水を入れたクッカーのフタが落ちた!あー、やっぱり安定悪いなあ。まあ水だけでよかった。炊飯中だったら大惨事だった。安定が悪いのは分かっていたので、気をつけなくては。
仕切り直して再び火に掛ける。沸騰してしばらく温め続け、適当なところで火から下ろす。ここでスマホのタイマーがけたたましいアラーム音を鳴り響かせた。京セラTorqueG02というアウトドア用のスマホで、音はハンパなくデカイ。炊飯の蒸らし完了。
この音なら絶対気がつかないことはないが、静かな山のテント場では使えないだろうな。
フタで湧いたお湯は、そのままFD味噌汁に。サンマ蒲焼缶を開ける。
そして、問題のチタンクッカーでの炊飯は・・・
・・・うん、見た目は特に変わったところもない。柔らか過ぎず、芯も無し、かなり上手に炊けたほうだ。
肝心の底部分は・・・うん、箸で確認した限りでは、米が真っ黒に焦げ付いている様子は無い。クッカーの内側底部は見事に焦げ付いているが、米は無事。これは、ステンレスのシェラカップでの炊飯と同じだ。
では、無事に本日の糧を得られたことに感謝して、いただきます。
そうはいっても、底の部分は焦げ付いているだろうなあ、と思いつつ、思いのほか上手に炊けた秋田こまちをほおばった。
さんま蒲焼も美味しい。FD味噌汁も驚きの技術で普通の味噌汁だ。
もっと色々な贅沢を食に対して行いたいが、結局、ULも限界に近くなってくると、食料や消耗品だけで今回ですら1kg越えになっているわけで、ここに大きなウェイトとなってくる。
ストイックに、たとえばカロリーメイトのみで過ごすなどというチャレンジも考えられなくはないが、それは他にこのアウトドア活動の主たる目的があればそれもいいが、そうでなければ寂しく侘しい思いをしてまでキャンプをやりたくない。
色々と難しいものだ。
さて、結局、米はクッカー底部でも無事だった。僅かに茶色の部分があっただけで、焦げ付きは皆無だった。これは、シェラカップ炊飯より成功している。
勝因はなんだろうか。
ひとつは、吸水を十分行ったこと。今回は必要以上の長時間と思うが、少なくとも30分以上、特に冬場は1時間程度が望ましいらしい。
ふたつめは、ESBITの火力は弱々で、かつ炎が1点に集中しないこと。
アルコールストーブと同じく、ESBITは炎が揺らぐ。沸騰に必要な熱量が最低限得られる程度なので、これが幸いしているのだろう。
みっつめは、やはり火から下ろすタイミングだと思う。
今回はESBITのスタンダードサイズ2個+燃え残りで、フタをせず火に掛けて米の表面が出てきたら蓋をして、途中で火が消えるアクシデントがあったが、ちょっと水を足して再び火に掛け、米が炊けてくるプロセスのいわゆるチリチリ音がしてきて、その後の湯気が勢い良く出ている状態からひわ~と立ち昇る変化を待たずに早目に下ろした。
おそらく、これが焦げ付かなかった理由だと思う。私はいつも、タイミングが遅くて焦げ付かせる事が多いので、今回はチタンということでビビッて早目に火から下ろした。
そして、蒸らし時間を30分、十分に取った。
結果、驚くほど美味しく炊けた。まあ、例によって毎回々々上手に炊けるわけではないだろうが、チタンビギナーズラックなのか、今回は良かった。
静かな夜。市街地とそれほど離れてはいないので、若干町の音は聞こえてくる。
ツェルトでスマホに入ったシン・ゴジラなど見ながらスキットルのバーボンを飲む。
このスキットルはステンレス製で、これまた余分な重量なのだろうが、あまりモノにこだわりの無い私は様々なモノを大事にしてこなかった報いで、逆に「愛用品」というものに憧れがある。
このスキットル、私の憧れの愛用品になってくれないものだろうか。
なぜか、気がつけば23時を回っていた。私はキャンプでは20時や21時で寝てしまうことが多いので、ちょっとびっくりした。
ツェルトの入り口を閉めて、シュラフにもぐりこむ。今日はISUKAのエアー枕も持ってきた。徹底したUL、なんて言う割には、色々と余計なモノを持ってきている。
・・・と、耳元にモスキート音。あー、やはりツェルトじゃ虫は防ぎ切れないか。
朝起きたら顔を2箇所くらい食われていた。
強引な方法としてイヤホンで音楽を聴きながら寝てしまう、というのがある。イヤホンをしてしまえば、蚊の羽音は聞こえないから気にならない。が、イヤホンは忘れてきた。それに、この方法は悲惨な朝を迎える可能性があるので、やはり虫が行動を始めた季節はキャップ(野球帽タイプ)に農作業用防虫ネット、がいいかも。
気がついたら寝ていたが、朝は早く目が覚めた。
朝食は消費期限が迫っている尾西の白飯。万が一、チタンクッカー炊飯が悲惨な結果に終わった場合の保険として、1食はアルファ米にしておいた。これにFDの親子丼の具を載せて食べる。それに、FD味噌汁。
炊飯ではないので湯沸しのみ。簡単。
15分蒸らして、クッカーにどさっとあける。上にお湯でもどしたFD親子丼をのせる。
しかし、スノピの焚より深くないとはいえ、このEPIのクッカーも深型なので、やはりご飯は食べ難い。シェラカップが恋しくなる。
食べ終わって、コーヒーでも飲むかと思ったが、水の残りが心許ない。500ml弱しかない。
うーん、やはり2Lでは足りなかったか。
じっとしてるのみのキャンプ(水補給不能の野宿)であればぎりぎり足りるだろうが、MTBで走り回るとなると、そうとうハアハアゼエゼエするわけで、結構消費する。やはりちょっとは余裕をみた分量が必要だな。
では、出発準備をしよう。
荷が少ないから簡単、と思いきや、分割したリッジレストなど、ちょっとやりにくかった。もっとも絶対量が少ないので、あっというまにパッキングできてしまう。
昨日確認した分岐まで一気に走る。
分岐で地形図を確認。
その後も押したり走ったり地形図を確認したり。野性味溢れるおもしろいライドだった。
最後に舗装路に降りる手前、送電鉄塔で休憩。電線が繋がっているのは昨日キャンプした丘だ。
水分を補給して、風に吹かれる。楽しいソロキャンプだった。
最後は20度以上もあろうかという急斜面の下り。僅かに階段状の跡らしき土の段があるので、それを利用してMTBと共にそろそろと降りる。かなり長い下りだ。
ここは乗れない。乗ったが最後、止まれない。乗った状態でフルブレーキを握っても、グリップ出来るような傾斜ではないのであっという間に転げ落ちてしまう。
慎重に押して降りていく。
最後にガードレールに遮られて舗装路まで出る。この道は、道ですらなく、舗装路からの入り口は用意されていない。地図に無い道、なのだ。
これで、今回のMTB&ソロキャンプは終了。このやりかたは、正直かなりリスクが伴う。せめて自然遊歩道とかならまだマシなのだが、完全に作業道、杣道、獣道、なので、いかなる困難があるか知れない。それに、そういった道は「何かに、誰かに使われている道」なので、いかなる現状変更もすべきでない、と私は思う。日本に私有地、公用地、ではない土地は残っていないのだ。慎ましく、痕跡を残さずお借り出来れば幸い。そうでなければ「立入禁止」で締め出されても文句はもちろん言えない。
そのため、動画では極力現在地が特定されないよう気をつけた。もちろん分かる人は分かるのだろうが、どうかひっそりと黙認に甘えて使わせていただけることを認識していただきたいと、私は思う。
ということで、自宅に帰りついた時、「作成済み携帯トイレ」を現地に忘れてきたことに気がついた。
そのため、翌日早朝にバスで近隣まで行き、あとは徒歩でルートを辿って、取りに戻った。
無事回収出来たが、朝日に当てられて、ぱんぱんに膨らんでいた。その空気を抜く際に悶絶しそうになったのは、私だけの秘密だ。
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