前編1/2 後編2/2
遅い夏休みを取って、2泊3日で南アルプスの北岳に行って来た。日本で二番目に高い山、標高3192m。
Youtube動画 その1~その6
3000m峰は初めてだったりする。
若い頃に奥様と一緒にヒマラヤトレッキングツアーで5360mのゴーキョピークに登ったりはしているが、いずれにせよ私の登山経験は浅い。
1997年5月12日
酸素濃度は低地の50%弱
学生時代にワンゲルにいた人、社会人で登山グループに所属している人たちにははるかに及ばない。
今回、2泊3日の野外生活は私にとって久しぶりだったりする。いつ以来だろうか。
私の動画はキャンプ、登山ほぼ全てが1泊2日。たまに日帰りが混ざっている。
7~8年ぶりだろうか。最後は家族で犬連れで行ったキャンプだった気がする。
準備
行動山域
北岳は超頑張れば日帰りでも可能な3000m峰だが(超健脚向け)、せっかく都合の良さそうな位置に山小屋がいくつもあるので、少なくとも2つはテントを張ってみたい、と思って2泊にしてみた。
ベースウェイト 5,820g
食糧、水、燃料、他消耗品等 4,062g
撮影機材 1,193g
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合計 11,075g
という重量。食糧や燃料は順次減っていくので、少しづつ軽くはなってくれるが、やはりテント泊だと軽量化もある程度限界はある。
今回、自分自身の特性として「登山行程だと食事は贅沢嗜好にならない」ということに自信が持てず、やはりおいしいキャンプめしにありつきたい、という欲を捨てられず、結果色々と余らせて持って帰ってきた。
新しい発見
ただ、面白い発見もいくつかあった。
まず水の消費では、標高2200mから出発して3190mに登頂し、3010mでキャンプする7時間の行程で1Lあれば足りた。
真夏ではもっと消費するかもしれないが、それにしてもMAXで2Lあれば足りるだとうと思えた。
これは携行する水の指標になってくれるだろう。
火器は今回EPIのシングルガスバーナー。2泊5食+コーヒー等で、110カートリッジ1個を使い切った。思いのほか低燃費と感じた。
EPI REVO-3700は121g + 110カードリッジ187g = 308gで、実はこれは、
トランギア アルコールバーナー112g + 燃料250ml,250g + ポリビン250ml,31g = 393g
となって、実はアルコールバーナーより軽い。もちろん、トランギアが真鍮製で重い、燃料は上手に使えば250mlなんていらない、という面はあるだろうが、ガスバーナーだとしても思ったほど重量物にはなっていない、ということが分かった。
バーボンはスキットル240ml + ペットのポケビン200mlを持っていった。いつもなら、スキットル1本では物足りない感じがするが、今回は、1日目は翌日の標高差1000mの登頂に備えて控えめ、2日目は3010mの高度でのテント泊でちょっと動くと息切れがするくらいでびびって控えめ、で、結局スキットルの半分程度しか飲まず、ずいぶん余らせて帰ってきた。
これは自分でも意外だった。
出発
私は東京都八王子市に住んでいて、最寄り駅はJR八王子駅。
南アルプス方面にはアクセスがいい。
とはいえ、平日で空いているのは結構なのだが、JR甲府駅⇒広河原行きのバスは平日の始発がAM9:05で、甲府駅に早く着き過ぎても意味が無い。
いつもは同じホームの逆側から新宿駅に向かうJR中央線を、今日は登山ウエア&11kgのザックで甲府に向かう。時間も出勤時間とほぼ同じ。なんだか罪悪感のような、変な気分だ。
JR八王子駅
甲府駅に着き、バス停を探す。
すぐに分かった。すでにいくつも大きなザックが並んでいる。平日だというのに、日本の山はどこも人気のアウトドア・スポットだ。
1時間ほど待ち、バスに乗り込む頃には私の後ろもかなり長い列になっていた。
結局乗ったバスはいっぱいで、普通の街中を走る乗り合いバスに、11kgのザックを膝に抱えて2時間走る。広河原にAM10:58。すでにお昼近い。
プラティパス500mlは粉末のアクエリアス。これをハイドレーション仕様にして、グラナイトギアのサコッシュに地図、コンパス、ミニノート、行動食を入れる。
私のスマホは京セラのTORQUE G02で、ザック等にカラビナでぶら下げられる専用のアクセサリーがある。やっと出番が来た!と思い、颯爽とぶら下げてみたが、案の定、ぶらぶらしまくって鬱陶しくてしかたがないので、山道に入ってすぐに外してしまった。
使えないものを買っちゃったなあ・・・まあでも、こういったモノは実際に使ってみないと分からない。何かの役に立つ時が来るかもしれない。
吊り橋を渡ってスタートする。
早く渡ってよおじちゃん達・・・(´・ω・`)
気分は最高に盛り上がる出発だ。が、細い吊り橋の真ん中あたりにいつまでたっても居座っている爺様軍団がいる。数分待ってみたがいつまでたっても渡る気配が無いので、業を煮やして無視して吊り橋に踏み込んだ。
まあ、しょうがない。北岳も人気の山だろうから、平日のこの山域にも数多くの団塊世代の登山客の方々もいらしていることだろう。山小屋近辺での傍若無人振りは目に余るものがあったが、気にしたところでしょうがないのだ。今時、どこの山でも見られる光景だし。
今回は平日の計画で比較的人は少ないはずだったので、それでもマシだっただろう。
広河原 ⇒ 白根御池小屋
吊り橋を渡ると、すぐに広河原山荘がある。登山道の起点が分からず、テント場まで行ってしまった。
戻って出発点を見つけ、山道に踏み込む。
スマホのYAMAPのSTARTをクリック。これ以降、YAMAPを動作させっぱなしで行動したが、実は最終日にモバイルバッテリーの容量切れ、スマホも残り12%、という憂き目に合って、完全に記録はできなかった。まあ、いい。行程は逐次ノートに記していたので、どこを何時に通過したかは分かる。
最初は起伏も緩やかな、樹林帯の登山道だ。
道に渓がだいぶ流れ込んでいる。いつもこうなのだろうか。それとも、2日前に通り過ぎた台風18号の影響だろうか。
ものの30分で、白根御池小屋と大樺沢への分岐点に着く。ちょうどお昼なので、ここで昼食にしよう。
お昼はカレーうどん。乾麺。トッピングに本当はコロッケが欲しかったが、今回は魚肉ソーセージ。
今回、持ち込んだ食材は、要冷蔵と缶詰は一切無い。すべて常温保管できるもので揃えてきた。唯一、キャベツの葉を数枚持って来た。これはZIPLOCに2mmの銀マットシートをカットしたものに挟んで持って来た。
半袖でお昼を食べていたら、またしてもブヨに食われたらしい。確信は持てなかったが、ブヨに食われた痕は数時間後に痒くなってくるので、すぐには判別が付かないことが多い。タチが悪い。
お昼を済ませて、再び歩き出す。ここからは物凄い登りの連続になった。
スマホ地図の等高線を見ても、凄い密度になっている。
ゆっくりゆっくり、息を切らせて登っていく。
この時、Goproは新しく買ったクリップマウントで左のショルダーベルトに挟んでいたが、向きが悪くすいぶん左を向いてしまっているので、そのままでは使えず、レンズキャップを被せたままオフにしていた。
しかし、翌日、実はマウント方法を変えればほぼ正面を向いてくれることがわかり、フリーハンドで撮影が出来るようになったが、この時はそれを知らず、とても手持ちで撮影出来る余裕は無く、記録できなかった。
しばらく急登をあえいで登り、ようやくマシな斜度に落ち着いた頃、ふと右足のかかとに違和感を感じた。なんだかスリッパを履いているような?
なんと、ソールがかかとから剥げてきてしまっている!
え?(゚Д゚;)
初めての経験で、かなりあせった。とりあえず、エマージェンシーで持ち歩いているパラコード(細引き)2mmを使用して、なんとか固定してみた。
しばらく歩くと、また違和感、スリッパ。この固定方法じゃダメ、と、別の方法で固定してみる。
と、ふと見ると、右足だけじゃなく左足も剥げてきている。両方かよ・・・
(´;ω;`)
今回は、昔ヒマラヤに行った時に履いたスカルパの登山靴を履いてきたが、さすがに20年も経ってしまっている。無理があったのだろう。
とりあえず固定に時間はかかったがなんとか固定に成功して、歩き通した。
斜度が比較的緩やかになってから、ほどなく白根御池小屋に着いた。
まず受付に。テント泊は600円。
登山靴のソール剥がれについて聞いてみたが、特に出来ること無し。そりゃそうだろう。ちなみに登山靴も売っているそうだが「高いです」とのことなので、まあ値段は想像出来たので、あえてそれ以上は聞かなかった。
帰って色々調べてみると、登山中のソール剥がれは結構経験者がいるらしい。これも経験になった。
テント泊の受付を済ませ、エリアを聞いて移動。山小屋が目の前のスペースは既に3~4張りテントが設営されていた。その中に私と同じMont-Bell ULドームシェルター1型があった。ポピュラーではないが珍しくはない。が、同じテントを見るのは初めてだな、と思った・・・が、よくよく考えてみると私は人の来ないエリアの単独行ばっかりなので、そもそも人に全く会わず仕舞いのキャンプばかりなのであった。唯一、奥多摩くらいかな。
もうひとつのエリアに行ってみると、そこには神秘的な池があった。おおお、こんなところに・・・青い空と白い雲を映している。
奥に1張り、テントがあった。私は、池のすぐ脇に張ることにした。こんな素晴らしい風景だから、ぜひそうしたかった。
テントを張り、40cmに分割したリッジレスト・ソーライトを2つパラコードで繋げる。足元はザックやレインパンツでいい。
しかし、ちょっと寝てみたらずいぶん寝心地が悪い。度重なるテント泊でソーライトがすっかりヘタり切っている。そろそろ買い替え時だなあ。
兎にも角にも登山靴のソール固定が最大の課題だ。時間はたっぷりあるので、固定方法を変えてみては山小屋周辺を歩き回ってテストしてみた。
結果、なんとかしっかり固定は出来るみたいで、翌日以降も山行を実施することにした。
トイレに行ってみる。チップ制。100円を箱に投入して入った。きれいなトイレだ。
水は豊富らしく、こちらは無料だった。南アルプスのリアル天然水。
ぶらぶらしたり、うとうとしたりして時間を過ごす。明日は早いが、いくらなんでも明るいうちに寝てしまうのは無理がある。寝られやしない。
計画ルートを見直してみたり、時間配分を大きく余裕を取ってみたりしたが、元々がえらく余裕のある計画をびびって立てていたせいで、当初の計画とおりが一番無理なく行けると判断した。
ぼんやりと夕暮れになってきた。明日はAM3:30に起きて5:30に出発する予定なので、夕飯にしてしまおう。
夕飯は、アルファ米のえびピラフ、味噌汁、それにトマトソースのハンバーグ。このハンバーグ、レトルトのパックだが、なんと常温保存可の食品なのだ。
この山行では一番豪華なメニューだが、ご飯はアルファ米。
これは、使用期限が迫っているせいもあり、また買ってはみたもののメニューがかなり限定的だなあ、と思い、早目に消費しようと思ってチョイス。
普通の白米も2食分(0.8合x2)持って来たが、これ以降食欲が出ず、ついに炊飯して食べることはなかった。なかなかメニューの組み立ては難しいものだ。
いつもとおり、スキットルでバーボンを飲む。翌日は登頂予定、しかも標高差は1000mあるので、控えめにしておいた。
テント内が明るい。月は雲に隠れて外は暗いはずだが、明るい黄緑色のテント生地が気になった。いつもは落ち着いて好きなのに、今日は逆に明る過ぎる気がした。
翌朝、AM3:30に起床。音を鳴らすことが憚られて、胸ポケットに入れたスマホのバイブレーションで目を覚ました。
テント内に吊るしたヘッドランプの明かりで朝食の支度をする。電池が弱っているのか、ちょっと暗い。Goproで撮影したらやたら暗い絵になってしまった。
朝食はアルファ米の五目ご飯とワンタンスープ。ワンタンスープはマルちゃんの乾麺タイプ。パッケージは引っ剥がしてラップにくるんできたが、半量で十分だった。
なんだかんだで出発はAM6:00。何に手間取ったのか。思ったより片付けに時間がかかった。
白根御池小屋 ⇒ 八本歯のコル
ザックを背負って歩き出す。樹林帯で、等高線をなぞるように進む、緩やかな道。
大樺沢まで出る。
時折、顔に雨を感じる。レインウエアを着るほどではない。
ほどなく2名の女性登山者をパスさせてもらった。他に登山者はいない。静かなスタートだ。
白根御池小屋では、何名か、早い人は5時過ぎに出て行ったと思われる。
しばらくして、大樺沢に出た。大きく開けた谷間で、非常に景色がいい。
バイオトイレがふたつある。使用はしなかった。
大きな谷間には、真ん中に大きな雪渓がある。
「山と高原地図」には、"雪渓を通らずに、なるべく左岸を行く"とある。
ここで単純なミスをした。登る方向、つまり上を見て、わざわざ渓を渡って左に行ってしまった。
川の右岸、左岸とは、上流から下流に向かって左右を言う。逆だ。
先行された男女ペアの方も同様に"右岸"に渡って進んでいかれたので、安心して着いて行ってしまった。
面倒な登り返しをさせられるところだった。幸い、"左岸"を行く方が、大きく手を振って「こっちだ」と教えてくれたので、自分の間違いに気がついた。ありがとうございます。
それにしても、きつい登りだ。足場がガレていて、斜度もあり、非常に体力を消耗する。なによりテント泊装備のザックが11kgある。これでも昨日と今朝で消耗品を消費しているので若干軽くなっているはずだが、6kgや7kgとはワケが違う。担ぎ上げる、という感覚に近い。
雪渓があるおかげで、自分が少しづつ登っているのが実感出来る。景色もいいので、結構頑張れる。昨日の樹林帯の急登のほうが精神的にきつかった。そんなときはGPSで正確な現在地を確認しながら登ると、自分が進んでいることが実感できる。今はそれがスマホで出来るので、便利。キャリアの電波が入らない場所でも使えるアプリが色々ある。
私は「YAMAP」と「地図ロイド」を使っている。
谷間の左岸をほぼ直上して、稜線に近づいたところで右に折れる。
ここから短い梯子の連続になる。
時折、下山のグループと行き違うが、そのたびにいい休憩になっている。
丸太で組まれた梯子は、手も使って1本づつ確実に登っていく。
かなりな数量のハシゴをこなして、八本歯のコルに出た。なかなかな高度感だ。
大樺沢の登りと今のハシゴ場で、500mlの薄いアクエリアスを使い切った。
風が強い。
適当な岩陰を選んで、ザックを下ろし、座る。
プラティパスの500mlに、同じく2L(中身は700ml程度)より水を移し、再びアクエリアスの粉末を入れてよく攪拌する。まあ、シャカシャカ振るだけだが。
ハイドレーションに戻して、キャップをしておく。
ハイドレーションを使い始めた時はキャップ無しだったが、地面などでバイトバルブが汚れるので、私にはキャップは必須だ。
チョコレートとミックスナッツでエネルギー補給。
2/2へ続く 前編1/2 後編2/2
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