登山は2017年9月19日から21日、快晴。
気温は低地で10度くらいと思ったが、突風に巻かれた3000m地点では7~8度くらいだと思う。
服装は、速乾性のモンベル・ジオラインTシャツに、同じくジオラインの中厚手の長袖シャツ。下着も速乾性の登山用トランクスに登山パンツ。
ザックは約11g。
大樺沢から八本歯のコルを登り続け、大汗はかかない程度の、ちょうどよいレイヤリングだったと思う。
突風は吊り尾根分岐の稜線に出た瞬間に襲われ、体が浮いた。
そのまま膝からくずおれ、近くの岩陰に避難。岩陰に入っても、台風のような突風に晒され続けた。
ただちに寒さは感じなかったものの、3~4分しても突風は収まらず、このままでは体温が奪われると思い、ザックから中綿入りのアウタージャケット(ヤッケ)を取り出し、着る。
次にゴアテックスのレインパンツも取り出し、履く。レインパンツのため、登山靴を脱がなくても履けた。
そして軍手を出して履いた。
ヤッケのファスナーを首元まで全閉、フードをかぶる。
じきに暖かさを感じるようになった。
この時、これらを着込んだのは「念のために」という程度の気持ちだった。
その時、気が付いたのだ。
体が震えている。それも、かなり激しく、ぶるぶると震えがきている。
ここまで、自分の体感としては明確に「寒い」とはほとんど感じていなかった。
幸い、それ以上の不幸は起こらず、30分ほどで突風は緩んだ。
その間、私は「もしこのまま風が収まらなければ」と思い、また震えが更にひどくなり回復しそうもなければ、とも思い、アマチュア無線機を手に握り、救助要請のタイミングを見計らっていた。
登山は基本は自力リカバリーが原則。
私はザック内にダウンウェア上下もダウンシュラフもシェルター(ツェルト生地のフレーム自立型)も持っている。今の位置からある程度降りてこれらにもぐりこんでしまえば相当な非常事態でも大丈夫なはずだったが・・・
・・・私が怖かったのは、自覚しない寒さの中で気が付いた、自分の体の低体温症だった。
少なくとも意識が混濁してしまうような事態に陥る前に、警察等に自分の現在位置と状態を連絡しなければ、間に合わない、助からない、と考えていた。
もちろん、大げさに過ぎることは分かっているが、私は自分で把握することが出来なかった急速な体の状態の変化にびびった。
稜線に出て突風に煽られ体が浮いてから、ヤッケ等を着込むまでものの数分。しかも、私は自分で「寒い」と感じなかった。
低体温症に陥った、その初期の状態を、自覚出来なかった。
ここで、2012年5月に北アルプスの白馬岳でベテラン登山者6名が遭難死した事故を紹介。
毎日新聞朝刊2012/5/6 一面、社会白馬岳で倒れていた6人の死亡が確認された。軽装を吹雪が襲う。春山一転氷点下に、装備判断が難しい時期だった。毎日新聞朝刊2012/5/8 社会白馬岳遭難の遺留品を回収した。ザックに冬山用ズボンなど用意、約15キロあった。6人で使用したと見られ、発見時に遺体に巻きついていたツェルト1点も回収した。
元記事:http://www17.plala.or.jp/tokamori/zshirou0.htm
5月でも冬用装備のダウンウェアやツェルトを装備していた。
では何故?と元記事では推測されていて、私は確かにその通りと思った。
そして、私が感じたもう一つの追記事項が、今回私が経験した、あっというまの低体温症だったのではないだろうか、と。
事故のあった白馬岳では晴天快晴から一転して突風を伴った豪雨、休む間も無く吹雪に変わったらしい。
気温7~8度でただ突風に晒された私でさえ、ものの数分で体が激しく震えるほどの体温低下だったのだ。
そんな状況では、どこかに逃げ込んで大慌てでアウターに身を包まないと、とても間に合わないだろう、と。
亡くなられた方々は60代、70代の皆様。私よりだいぶ年上。
体力的にも厳しかった。
高所登山では、このようなことが一瞬で起こるのだろう。
私の場合も、吊り尾根分岐に出る直前まで「えらい風が強いなー」くらいにしか感じていなかった。
出たとたんに、このザマだ。
おそらく、私の行動の正解は、風が強くなってきて、稜線に出る手前でアウターなりなんなりを着込んでおくことだったかもしれない。
しかし、それまで急登の連続で汗さえかいていた状態で、まさかそんなものを着込む意識はまるで無かった。
これからも、そんな適切な判断が出来る自信は無い。
もし出来るとすれば、少しでも風が弱まった瞬間に来た道を引き返して高度を下げ、そこで避難を続ければ、風に当たり続けるリスクからは逃れられる?
しかし、あの場で立ち上がろうものなら間違いなく転倒していただろう。それほどの風が舞っていた。
私のようなビギナーがあれこれ書き綴っても仕方のないことなのかもしれない。結局、私のような者が適切な行動を提示できるわけもなく、机上の論理になってしまえばかえって危険な行動を書いてしまう恐れもある。
ただただ、「突風に晒され低体温症になりかけたが、それは驚くほどあっというまの短時間の出来事で、自覚出来なかった。恐ろしい」ということを、ここに提示して、僅かでも皆様のご参考になれば、と思うばかりだ。
事故に遭われた方々のご冥福をお祈りします。
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