2019年1月11日金曜日

2019年1月某日、ポールリードスミスのSEを楽器店で弾いてみる

PRS公式 SE Custom 24

※写真は使い回しです

Ibanez GRG170DXは残り(少ない)のギター人生を共にする「終の一本」たり得ない、と思い始め、どうするか、でもやはりもうそんなに弾かないだろうからもったいないからこれを最後の一本にするのか、それとももう少し”いいギター”を買うのか、悩んでいる。

今年のおみくじは「新しい事に手を出すな。これまでの事を継続していくのが良いぞ」とのこと。
でもなあ。

さすがに2万6千円のエレキギターはちょっと安過ぎたか。無理があったか。


もうこれで満足だろう、と思えたのだが。
いざ使い始めてみると、思った以上に「安いなあ・・・」が目立っちゃって、ちょっと淋しくなるんだよなあ。


気になるのはノイズとサスティン。

ノイズは対策のしようがある。本気のノイズレスを望むのならEMGなどのアクティブPUにしてしまえばほぼ完全に解消される。電気回路の入れ替えなどのブラッシュアップなどでもかなり改善されるはずだ。

しかし、サスティンだけはギターそのものの構造によるものなので、改善が難しい。
先ほどのEMGにすれば、思ったよりはかなりのロングサスティンが得られる。これもひとつの解決法。
または、ブリッジとナットをフロイドローズシステムにしてしまう、という手もある。これには大改造が必要だ。
多少気になる程度のサスティン不足であれば、エフェクターのコンプレッサーなどで補正してしまう手もある。
が、今回気になったのは、7フレット以降から12~17フレットで、特に短くなる特定の弦でのポジションが発生する点だ。


これはギターの品質そのものを現している。
当然といえば当然の事で、「価格なりのクォリティー」である点だろう。

自分の選定眼がヘボかった、というわけだ。
インターネットのカタログショッピングに慣れ過ぎてしまった弊害なのかもしれない。
私が最もバンド活動などにのめり込んでいた時代は、まだインターネットが無かったし、なにより私は大型楽器店に16年間も勤務していた。
言い訳なんて出来るわけのない経歴ってわけだ。

さて、GRG現役続行か交代かは引き続き悩むとして、「もし」交代するなら、誰にするのか。
私の気持ちは少し前に書いたストラトとの交代劇の時と変わらない。もうそんなに何十万円もするギターは私にはいらないのだ。いや、むしろそんな「高級ギター」を自分に許せないだろう。
どのみち、自分の腕前がそれだけのギター品質に追いつかない程度しかないのだし、あと何年弾くんだよ、自宅録音と懐かしの同窓生オヤジバンドでしか使わないのに、そんなカネを出すつもりかよ、ということになるのだ。

もともと私の「最後の友」のギターとして理想だったのは、2ハムバッカー、ミドルスケール、ミドルサイズ以上の太さのフレット、アームの有無はちょっと悩む、というものだった。あまり重くても、ストラップ使用時にバランスが悪過ぎても困る。
GRGを見つけた当初は、PUが求める構成と違う、ロングスケール、という点が、悩みどころだった。
しかしそれでも「このくらいの差異なら納得できるだろう」と思い、購入した。安かったし。


もしかしたら、楽器店で一度手にしてみると、やめたかもしれない。・・・・・いや、どうだろう、「安いんだから、まあこれくらいだろうな」と納得して買ったかもしれない?

そう、これまでのギター人生での私の感想だが、ギターは半年や一年ほど弾き込んでみないと、自分に合う部分、合わない部分は、なかなか実感出来ないものなのだ。
楽器店で手にしてみて「うわ!これ凄いイイ!電気が走ったみたいだ!」とはならない。もうそうであれば、逆に自分の思い込みと実際に使ってみた際のどでかいギャップに警戒しなくてはならないくらいだ。

現在の楽器業界の事はまるで分からない。もう時代が飛び退ってしまっていて、流行り廃りや傾向や、いやメーカーの変遷すら知らないでいる。
もし「それなりのギター」を買うつもりなら、次は本当に最後の一本になるだろう。もうこれ以上の金額を消費(浪費だろうと思う)することは、自分に許せないだろう。
だから、泣いても笑っても、もし買うつもりならば次が最後の一本になる。
とはいっても、失敗は許されない、一発だけの真剣勝負、だなんて気負いは全く無い。そんなにスゴいギターを買うつもりはない。
せいぜい、数万円、どんなに高額でも10万円前後が”自分に許せる範囲”だと思う。
それ以上は「これしか趣味が無い」レベルになって初めて納得するレベルだと思える。

YAMAHA?Ibanez?フェルナンデス?フェンダー?シェクター?
今度は2ハム、ミドルスケール、セットネックまたはスルーネックを条件にしようと思った。
トレモロアームはまたしても未定にする。自分のプレイとしては欲しい気持ちがあるのだが、実はそれほど使用頻度が高くない。ホントはいらないかもしれない、という疑問が自分にはある。が、どうしても排除したいような点ではない。

GRGで一番ひっかかったサスティン問題がどうしても気になる。が、よくよく冷静に考えてみると、これはサスティンうんぬんというよりも、ギターの品質そのものの問題なのだろう、ということを、うっすら意識している。


ストラト構造は自分的には確かに違和感は無いが、今回はむしろそこから離れて選択したほうがいいのかもしれない。
かつて、ストラトをメインで音楽しか頭になかった頃、唯一併用していたのがYAMAHAのSF-7000という12万円のギターだった。
ストラトに慣れ過ぎていた私は、レスポールがまるで手に体に合わなかった。パソコンを使い慣れている時、突如としてタイプライターを渡され「これで報告書を作って」と言われたような違和感だった。
しかし、このYAMAHAだけは、薄く幅広いミドルスケールのスルーネック、2ハムバッカー、ストップ&テールブリッジ、という、ストラトとは全く異なる構造のギターだったが、実によく使った。他にも20本以上のギターがあったにもかかわらず、時折ストラトをギタースタンドに収めて代わりに手にするのはいつもこのYAMAHA SF-7000だった。

そんな記憶が自分にある。
だから、今回は、あの感覚で次の一本を探してみたいのかもしれない。

私はこれまでセカンド・カーを何度か所有したことがある。車だけでなく、バイクや自転車やその他もろもろのセカンダリのナントカを所有してきた。たくさんあったギターもそうかもしれない。
しかし、そのセカンダリのナントカは、ろくに使われないまま、メンテナンスも怠り、少しづつ劣化していってダメになっていった。
いつもいつも同じ失敗を繰り返してきた。
だから、私は今になってセカンダリのナントカには異常に警戒心を抱く。
どうせ使わないでダメにするだろう、と。
その予感はいつも当たっていたので、完全な予備物品、保守物品でない限り、「いつも使っているコレの、セカンドのモノ」という物を持つことを避けてきている。

唯一の例外が、あのYAMAHA SF-7000だったのだ。恐らく私の生涯で、限定的な使用だったとはいえ唯一まともに使ったセカンド・ギターだったのだろう。

今回、その郷愁が思い起こされる。が、実はそうではなく、私にとっての最後の、セカンドでは無くメインのギターになって欲しい。

今現行のYAMAHAでセットネックのなかなか面白いギターがある。ちなみに、私はYAMAHAの代表格であるSGは苦手だ。SGはいわば「ダブルカッタウェイのレスポール」であって、本質はレスポールと変わらない。ずっしりとした重さもネックの握りもストラップでのバランスも、まるでレスポールと変わらず、私には手にも体にも馴染まなかった。

面白い、と思ったギターは、REVSTARというモデル。
メイプルトップ、バックマホガニー、セットネック、ミディアムスケール、2ハムバッカー、基本はアーム無し!のブリッジ(ビグスビータイプはあり)。なかなか潔いモデルだ。
うーん、これかな、と思えるギターだ。
ただ、YAMAHAにしてはちょっと微妙なスタイリングな気もする。なんというか、平板っぽいというか。もちろん綺麗な木目調もあるのだが、このモデルから漂う平べったさは何だろうか・・・。

Ibanezでももちろん探す。が、全体的にどうしてもヘビメタのストラトベースが主流な感じがする。ミドルスケールが無い。今回は選択肢から外れるかも。

なんとなく、気持ちがストラトから離れたがっている。GRGでの失敗が響いているのだろうか。
かといってレスポールはステキではあるものの、自分には弾けないギターであることは分かっている。
あのYAMAHA SF-7000が心に宿っている気がする。もちろん、もう新品では手に入らないし、今回は新品以外に選択しようとは思わない。

ふと、ポールリードスミスに目が行った。いや、目が行くのは結構だが、このギターは40万円とか60万円がメインのモデルだ。到底手の出る金額ではない。
いや、そもそもレスポールライクだろう、と美しいスタイリングと木目をあれこれめでていたら、いや、待てよ・・・・
なんか見た目が「レスポールの外観にストラトのシェイプ」っぽくないか?
・・・・・いやいやいやいや、値段を考えろよ。60万だよ、60万。たとえ購入可能だとしても、オマエ今更ギターに60万円か?

 PRS「SEっていう7万円くらいのもありますよ」

あああああああああああ!!!やめてくれぇぇぇ!!!手が届いてしまうではないかぁぁ!

PRS公式 SE Custom 24 Demo オジサンすげえうまいよ!

PRSのSEは「Student Edition」で、学生でもPRSの品質を手に入れられるように、と作られたギターとのこと。
もちろん、PRS的には超廉価版モデルではあるものの、あのPRSが自分ブランドのパチモンまがいのモノを出すはずもなく、PRSのクォリティそのままに作られたモデルとのこと。
へー。ほー。いいじゃない。すごいじゃない。
半分ヨイショの楽器店の売らんかなレビューを見たり、Youtubeの外国人のおっさんがばりばり弾いている動画を見たり、なかなかステキなギターなのであった。
こんなのもあるのね。

見れば見るほど、調べれば調べるほど、魅力的に見える。
残念ながらノントレモロのモデルは7弦だったり高額機種だったりするが、もとよりアームはあってもなくてもくらいにしか考えていないし。
問題は・・・・25インチのスケール。これ、ロングとミディアムの中間なんだな。
・・・どうなんだろう。ちょっと想像がつかない。実は、完全にミディアムスケールだと、弦のテンションが弱く、若干音程が不安定に聞こえたりする。それがフローティングのトレモロブリッジだとなおさらだ。
狙っていた2ハムは希望通りなのだが、それはそれでシングルのスレンダートーンやハーフトーンの可愛らしさ、色っぽさに慣れた耳にとって「2ハムって、どうなんだろう」という一抹の不安が無いことは無い。

重さ、バランスはどうなんだろうか。

やはり、これは一度持ってみないとなんとも言えないのだろう。
というわけで、仕事を定時に終わらせて、地元八王子の島村楽器さんに行ってみた。

幸い、PRS SEは人気のギターらしく、大抵は展示してある。
といっても、事前に電話して展示を確認しておいたわけじゃなく、「もしあれば」程度で寄ってみた。こういうのは、なんとなく縁みたいなものを感じられるかどうか、というのも楽しい。無ければ無いでよかったのだ。
展示されていなければ、GRGの替え弦でも買って帰るつもりだった。

展示はしてあった。
ん?Custom?Standard?どう違うんだ?
店員のお兄さんに聞いてみたら、ボディトップがメイプルなのがCustom、単一のマホガニーボディがStandardとのこと。ありがとう、お兄さん。
恐る恐る、試奏していいですか、と聞いてみる。昔は私がお客様に試奏していただく立場だった。いらぬ緊張をして体中から汗が出てくる。何やってんだろ、オレ。
快く許可していただき、マーシャルに繋いでチューニングしていただく。いや、もう、ホントに、申し訳なくてたまらない。そんなオレの過去など知る由もない店員のお兄さんには、さぞ挙動不審だったのではないだろうか。

手にしたPRS SE Custom 24は、トップのフィギュアドメイプルがずいぶんと大人しく見える見た目だった。いや、これは”フィギュア”とかのイメージの派手な模様ではなく、タダのトラ目?なんか、こう、PRSといえば、えげつなくハデハデな虎目珠目のメイプルトップを想像していたし、WEBで見るSEもそんな感じだった。
ふーん、大人しいんだねえ・・・

ま、見た目はともかく。

手に持った瞬間から分かる高品質。というか、この1年、あまりに廉価なギターを手にしてきたギャップなのだろうか。
いやー、いいねえ。素敵だねえ。これだよ、こういうのが良かったんだよ。
ずっとストラト系ばかりを手にしてきた自分には、もうセットネックというだけで高級ギターに見えてしまう。そういうチープなマジックに簡単に騙されてしまうのだ。
さて、音は?スーツのベルトで傷が付かないように、ネクタイでバックルをガードしてギターを抱える。

おそるおそる、クリーンで弾いてみる。
うーん、音そのものは店内で聞いても良いんだかなんだか分かりゃしないのである。どのみち、よほど酷くなければアンプとエフェクターでいじり倒してみないと扱い易いんだかなんだかわからないのだ。
もちろん、この状態ではハムノイズうんぬんも分からない。
そういう点は、まあPRSの品質を信じていいと思う。もし、ちょっと、思う点があれば、PUを交換したりサーキットを交換やメンテしたりして改善出来るからだ。

ここで問題とすべきは弾き心地である。ノイジーな楽器店の店頭で適当に出してみたサウンドではない。
・・・うん。悪くない。ナット付近のローフレットもある程度ワイドに作られていて、運指が楽だ。12フレット付近も問題無し。むしろ自分の下手糞に恥じ入るべきギターだ。ちょっと弦高が高い気がしたが、お兄さんに聞いてみたら、まだ十分調整可能な幅があるとのこと。
フレットの鏡面処理も美しい。指板に入るPRSの大仰なバードインレイも、別に邪魔はしない。
ワイド&フラット、そしてThin(薄い)。私の好きなネックのタイプ。

9~17フレット、それに限界の24フレット付近であれこれサスティンを感じてみる。
・・・・やっぱり、か。期待したほどロングサスティンではない。まあ一般的、という感じか。当たり前のレベルだ。
これはYAMAHA SF-7000のスルーネックのえげつないロングサスティンのイメージがあったからかもしれない。そんなものを望むのはお門違いなのだ。
それよりも重要な点は、ポジションや弦別によりばらつきを”ほとんど”感じなかった点だ。ほとんど、とは、あの場ではそんなによく分からない事も多いからだ。
前述のように、楽器店で試奏してみて「これだ!これが求めていたサウンドだ!」なんて分からない。半年や1年、あるいはずっと弾き続けてみないと、本当のところは分からないのだ。

しかしそれでも、少しづつ撫で回してみた感じでは、信頼するに足る十分な品質、と感じた。いわゆる「しっかりした作りのギター」というのを感じた。
実は、そう感じるギターやモデルなどは、そうは多くない。20万円以上のギターでも、それなりの作りや精度であるものが実は多い。
強いていえば、YAMAHAのハイエンドモデルなどに近い感じがする。PRSでは最廉価版モデルのはずだが、これはさすがと言わざるをえない。

予想通りだったのは、シンクロナイズドタイプのフローティングブリッジによる音程の不安定さだ。これは構造上そういうものだから、納得して使うべきものだろう。

試奏を終え、お礼を言って、ちょっと店員のお兄さんと話した感じでは、「まあ、予想通りかな。こんなものだろうな」というところ。
しかし、これが大事なのだ。
期待させるギター、逆にその場でバレる品質のいまいちなギターは、買ってから後悔する事が多い。
おおよそ予想通りのギターは、後から「あのギターは良かったなあ」と感じることが多い。
PRS SE Custom 24は、ほぼ予想通りであり、サスティンは期待した超絶ロングではなく一般的で、ネックの握りは好みで、25インチというロングとミディアムの間の中途半端な弦長は期待より柔らかくなく、懸念より強すぎない。ハムバッカーはごくフツーのハムバッキングサウンド、フローティングブリッジはやはり神経質、ボディは思ったより重すぎず、期待したほど軽くは無い。
ボディシェイプは厚すぎず、持ちやすい。
「使って確かめてくれ」と言わんばかりのギターだった。

とは言っても、まだ自分の中には迷いがある。
今、選択するとしたら、自分には十分な覚悟を強いる金額だ。10万円を割っているとはいえ、「これで最後だよ」というに十分な金額。これに満足出来ずに次の一本となれば、それは私自身が金銭にだらしのない道楽者の夫であることを証明してしまうギターになるだろう。
(もう既にそれは家族にバレているとも思うが)

しかし、私としては、この一本でケリを付けたい。もうこの一本が生涯の友として、私にはもったいないくらい十分です、と言いたい。
特段、このギターに恋したわけでもなく、楽器屋さんで試奏してみた結果、思いが募っていくだろう、とも思わない。
もちろん、楽器にも「一目惚れ」という出会いはあり、それ故にめくるめく眩い音楽人生の友として歩むことも少なくない。私にとってストラトがそうだった。
今、年を取った自分は、そういう出会いを求めなくなったというだけだ。若い時は若い情熱があり、年を取ればもっと落ち着いた出会い方を求めている。

今しばらくはPRSに気持ちが振れているだろうが、冷静に現在の音楽との関わり方を自分で振り返った結果、「やっぱりもういいや」という結果になることもある。

ただ、このPRSとの出会いは、十分素敵な出来事だった、ということは間違いないだろう。

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