2020年11月4日水曜日

北アルプス縦走 槍ヶ岳・大キレット 1of4

2020年8月22日~27日


Youtube動画シリーズ1作目

長い在宅勤務が続く中、東京はGoToキャンペーンからも外されてはいるが、緊急事態宣言は出されておらず、都民はなるべく外出を控えている。
そうはいっても完全に家に閉じこもっているわけにもいかず、少しづつ外には出ている。
私も4カ月半もの間、出勤は5~6回、あとは近所のスーパーとコンビニしか行っておらず、精神的にも限界を感じていた。そんなところに8月下旬、夏休みがやってきた。

さすがに今回だけは勘弁してもらおうと外出することにした。とはいっても元々観光に興味を持つ人間というわけでもなく、やはり登山に行きたかった。

どこに行こうか。

ミーハーな性格が災いして「有名な槍ヶ岳に登りたい」と。理由も何もない。ただただ有名な名前を知っていただけだ。
加えて映画などネタバレを嫌う性格でもある。さすがにコースや危険度などは調べるが、他の方の山行のブログなどは写真テンコ盛りでせっかく行っても既視感だらけでがっかりするので、なるべく見ないようにしている。

屹立したとんがりコーン。この山頂への登りが易しい訳がない。しかし、ハーネスやロープが必要というわけでもでなく、クライミングのバディで臨むほどではない、ということは分かった。

以前、どこかの何かの誰かのWEB記事で読んだが、
「北鎌尾根は素人が行けるところではない。登降線が曖昧で地図だけでは判断が難しく、現地で斜面を見て判断出来るスキルが必要」
というのがあった。こういうところは私のようなシロウト登山者が近寄るべきではないと思っている。少なくともガイドが必要だろう。
そうでなければ地図上で実線の登山道は歩くことができるだろう。

槍ヶ岳は穂高山系に隣接している。へー、と思って地図を眺めていると、ぐるっと縦走できそうな北穂高岳の手前に大キレット、という文字が目に飛び込んできた。
良くは知らない。知らないが、おっかなそうな所だ、ということは直感で分かる。
山渓オンラインなどで情報を調べてみると、一応は地図上で実線登山道であり、ロープなど特殊な登攀具は不要らしい。が、それでも相当おっかない場所であるらしい。

問題はテント泊の装備で行くことが出来るか、だろう。
ただし、私の装備はいずれにしろUL(ウルトラライト)であるので、自分が行動して負担に感じる11kg以上でなければ大丈夫そうだ。
・・・・が、4泊5日の山行で11kgにザックを収めるのはかなり難しい。
リミット12kgとして工夫してみることにした。

結局、ザックは水を別にして9.5kgに収めた。水はその日の行動計画によって可変となる。盛夏でもあるし、不足は許されない。3~4時間の歩行計画であれば1~1.5Lで足りる。コースがキツそうであれば2L。6~7時間だと2.5L。それでも自分の場合は1Lほども余ることが多いが、ケガをして傷を洗ったり、こぼしたり、思いのほか消費量が多かったりと、万が一のために余分に持たなくてはならないだろう。

食料は完全無補給を原則として約4kg。これは徐々に減っていく。
私は山に入るとだんだん食欲が無くなるが、長期の行動からして食べずに済むわけがない。
荷物を軽くしたければ食べて消費するしかないという自分への縛りも兼ねて、完全無補給とした。

火器は固形燃料。これが一番軽い。
アルコールストーブと違ってテント内でも使うことが出来る。(注意:テント内は原則火気厳禁)

ヤニの問題はあるが、軽くしようと思ったらこれ一択だろう。
・・・しかし、やはりというか、学習能力が無いというか、ヤニの問題で必要以上のストレスを抱える山行となってしまう失敗をやらかした。

day.1

そんなこんなで、私にしては珍しく平日ではなく土曜日の出発。
私は公共交通機関を使うので、始発バスの時間に移動計画が左右される。
今回も、どんなに頑張ってもスタート地点である上高地バスターミナルへ到着するのはPM12時となった。

予定通り、上高地へ到着。
おそらく平時ならば観光客でごった返しているであろう上高地は、驚くほど人が少なかった。
そそくさと準備を整える。
日焼け防止のアームガード。これはmont-bellジオライン製の速乾性能で、汗をかくと蒸散していき、気化熱を奪って驚くほど涼感を得られる。
剱岳に行ったときはこのアームガードで腕を日焼けから守ったが、手首から先はしっかり真っ赤っかになってしまったので、今回は自転車用のフィンガーレスグローブを用意した。
効果はばっちり。見事手の甲の日焼けひりひりを防いでくれた。
後々に判明するが、このグローブ、さして高いものではないが、予想しなかった利点と欠点があった。

ヘルメットはまだいらない。上高地から最初の宿泊先の横尾まではなだらかな沢沿いの、アップダウンの少ない登りだ。収納袋に入れたままにしておく。
本来ならは軽量化のためのこ収納袋も外すのだが、移動の際に固いヘルメット表面が外に出ているのはよろしくないと思って、袋も持ってきた。

さっそく歩き出す。河童橋に向かう道は遊歩道で、多くの観光客と一緒だ。むさくるしい登山者のカッコウが気まずいが、そこここにチラホラ同族の方もいるので、ちょっとほっとした。

明神館あたりまではお散歩コース、その先の徳沢ロッジまではハイキングコース、という感じだ。
徳沢ロッジでは幾張りか、テント場にテントが見られた。

僅か2週間前、すぐ近くの小梨平キャンプ場でテント泊の女性が熊に襲われている。僅かに腕を引っかかれたくらいで済んだが、この周辺のキャンプ地は現在厳戒態勢だ。

その徳沢ロッジを横目に梓川左岸をどんどん進んでいく。

今回は「とぼとぼ大作戦」で行く。
前回、近所の低山に久しぶりに行った時、意識せずにペースが速かったせいか、右のふくらはぎを痛めたらしい。
下山時にはそれを庇って見事に左膝をやられたので、それに懲りてペースを落として歩く。
右のふくらはぎは今でも若干違和感が残る。相当痛めつけたらしい。
今回予定では4泊5日と長い縦走になる。計画は1日の行程を短めに調整して細切れにし、歩くには無理のないようにした。

とぼとぼと歩く。その分、長く景色を楽しめる、とも言えるかもしれない。
4時間ほどで横尾山荘に到着。

着く前に雨が降ってきて、傘を出した。ザックのサイドポケットに入れておいたので、すぐに出せる。
道程が穏やかで短時間なら、カッパを引っ張り出して着るより手軽でいい。
ザックを外に置いてマスクを装着、テント泊を受付てもらった。
山荘から出ると、目の前の案内板のところをデカいニホンザルが2頭ゆっくりと歩いていった。

キャンプ地に移動する。雨はほぼ止んでいる。
山荘エリア入口付近には多くのテントがあったが、奥のエリアには2張りほどしかなかった。
エリアの隅にULドームシェルターを引っ張り出す。
今回は槍ヶ岳、大キレット、と厳しいところが多そうなので、フレームで空間を作れるこれにした。
中に入ればしっかり休める。

シェルターの前にトミカのピクニックシートを敷き、新兵器を用意する。SEA TO SUMMITの10Lキッチンシンク。
運びにくいプラティパスもこれで楽に運べる。そして水を溜めて頭を洗えるのだ。
本来の食器洗いはそもそも洗剤を使わないので無用だが、あると色々便利だろう、と。
僅か49g。

・・・なんでこう余計なモノを欲しがるのだろうか。UL登山では50gはデカい重量なのだ。それにわざわざ水を汲んできて頭を洗う意味はない。確かに水運びや一時的な物入れに役立ってはくれたが、はっきり言って「無くてもいいもの」だ。

などと考えながら自分のテントサイトで頭を洗ってみた。まあまあ使えるかな。
ただ、この後はキャンプサイトが標高3000m以上となり、水は貴重品で(1L=200円)とてもアタマを洗うわけにはいかない。飲用と食料用、それに行動用でせいいっぱいだ。
アタマはドライシャンプーで洗っていた。

さて、そうこうしているうちに夕方になってきて、更に雨が降ってきた。
シェルターに潜り込む。
だんだん降りが強くなってくる。そして・・・ドームシェルターの天井などより雨が沁みてきている。
よく見るとシームテープがだいぶ剥がれてきている。もう7年も頻繁に使っているので、劣化してきているのだろう。
雷鳥沢の豪雨で叩きのめされたレインパンツ(25年モノ)もそうだったが、経年劣化でシームテープが剥がれてくると、糊の跡がこびりついて新しいシームテープが貼れない。
いっそ、内側のシームテープを全部剥がして外側からシームコート材を塗布していったほうがいいかもしれない。
・・・いや、ぼちぼち寿命かな。この山行の終盤ではファスナーが壊れて一方向からしか閉められなくなり、よく見たら壁面が擦り切れて相当な面積で穴が開いていた。

そんなことを考えながら、結露と雨漏りをせっせと拭く。
速乾タオルで拭いて、入口を少し開けて外へ手を出し、片手で握りつぶしてじゅー。これでかなりきれいになる。

明日はAM2時起床、5時出発予定なので、今日は20時就寝、18時には夕飯の支度を始めたい。
12時に上高地バスターミナルを出発し、16時にここ横尾山荘へ着。そんなに余裕があるわけではないのだ。
・・・が、かっちりスケジュール通りでなくてもよい。まあ結局のところはこれに従って動いてしまうのだが。

というわけで、さっそく夕飯の支度にかかる。とはいっても、そんなに手間のかかる料理を作るわけでもない。
お米の吸水。家にある普通のお米。いつもはあきたこまちなのだが、今回はたまたまひとめぼれになってる。特別な理由はない。たまたま、だ。
いつも研ぐことはしない。そのまま吸水させるだけだ。家にいるときはちゃんと研ぐのだが、山行ではいつも研がないで炊いている。水がもったいない、というのもあるし、研いだ研ぎ汁をそこらに捨てるのも抵抗があるし。でもいつもこれで美味しく炊けている。

夏場なので20分の給水。外は結構な雨が降っているのでシェルター内で炊く。(注意:テント内の火気使用は非推奨)
火器は固形燃料のESBIT。これを使うとクッカーの底にヤニがべったり付き、テーブル代わりのボードやスタッフバッグを著しく汚すので、今回はアルミホイルを底に被せてみた。これならヤニからクッカーの底を守れるし、薄いので火力が落ちることは無いだろう。

ところが、いい具合に炊き上がったかと思って火から下してみると、アルミホイルに穴が開いている。ESBITの火力に負けたらしい。
あー、これではダメだ。諦めよう。開いた穴で炎が直撃し、結局ヤニは防げなかった。

さて、ご飯の蒸らしに20分。
その間に次の準備をする。
今日はカレー。フリーズドライのカレーがあったので、それにする。お湯をかけるだけの超簡単調理。
それに味噌汁。ちょっと社食っぽいメニューだが、まあいいだろう。

蒸らしも完了し、FD(フリーズドライ)カレーを準備。お湯を入れるだけ。
そのまま上からぶちまけるか、と思ったが、思い直して「縦カレー」にする。ご飯をクッカー内で縦半分にして、空いたもう半分にカレーを入れた。
うんうん、ちゃんと半分づつのカレーライスっぽいではないか。
それにFD味噌汁。

いただきます。

スキットルにアーリータイムス。
何故か分からないが、のどが焼ける感じがして焦った。なんだろうか。
(登山中に朝夕検温、正常。現時点でも検温の記録を続けており、発熱等は無し)
今回、お酒はこの200mlのアーリータイムスだけ。何泊かの山行になると私はお酒をあまり飲まなくなるので、これで十分だった。(もっとも最後に1缶のビールを買ってしまったが)

最初の夜を堪能し、シュラフに潜り込む。
そうそう。
今回、まずマットはサーマレスト・ウーバーライトSを新調した。
あれ?と思った方もいるかもしれない。そう、そのすぐ前に180cmのMサイズを買っている。

これにはあれこれと言い訳があるが、その間抜けな経緯はこうだ。
まず、私はエアマットを信用していない。自分の使い方に合ってないと思っている。
というのも、まず第一にパンクリスクが常につきまとい、それがストレスになるからだ。アウトドアでエアマットがパンクすれば、地面に直に寝るのと変わらない。これは「睡眠で疲れを取る」という山行にとって非常に大事な要素を著しく損なうことになる。
ではなぜそんなエアマットを買ったのかといえば、理由はふたつあった。
ひとつは、収納容積が非常に小さくなること。ほぼ缶コーヒーのサイズになってしまう。
実は重さはクローズドセルマットと大差なかったりするのだが、30Lザックでテント泊に行く私にとっては重量もさることながら、この容積の問題が非常に大きかった。
もうひとつは、厚みの問題。
このウーバーライトの厚みは6cm。
実はもうひとつ、mont-bellのULコンフォートシステムエアーパッド90cm(旧型)を持っていて、これは厚み8cm。寒い冬にはなかなかの性能を発揮してくれるが、いかんせん90cmしかなく、しかもすごい厚みを持っているので、足元にザックを敷くなどなどなどのトラディショナルな方法では、ULのペラペラのザックやレインウエアなど敷けるだけ敷いてもまだ段差は埋まらず、実は非常に寝にくいのだ。
が、やはり収納の小ささは魅力だ。
そこで考えた。まず、身長をカバーしてしまえば段差の問題は解消出来る。しかも180cmなどという長大なエアパッドでも、収納は驚くほどに小さい。
更に6cmもの厚みを持つエアパッドならば、ツェルトで土砂降りに合い内部に水深1cmの川が出来たとしても、エアパッドの上で問題無く過ごせてしまうのではないだろうか。
などというスケベ心も働いて、これはすんばらしいアイテムだ、と勝手に思い込んでしまった。
更に、「丈が足りないと寝づらい」という当初の懸念も忘れて、どうせなら最小でいいんじゃね?と更なるスケベ心が働く。

まずはmont-bellで露呈した「丈が足りない」という点にも着目して購入してみたのが、ウーバーライトMの180cm。目論見は当たって全身をカバーする、しごく寝心地のよさそうなマットだった。
これを検討した際にR値も考慮に入れたが、ウーバーライトのR値は2.3、いつも使っているクローズドセルのリッジレストSO-Liteは2.1。リッジレストは雪上で使っても全然問題なかったので、十分だろうと思う。
予想外だったのは、膨らませて上に乗ってみると、思いのほか薄かったこと。ちょっと立膝をついたり手を置いたりすると簡単に潰れて床面に当たった。これは、もし豪雨で水上のような状態になった場合、浮いた板の上で過ごせるみたいな都合のいいモノではない、ということを示していた。
まあ、当然といえば当然だった。実はmont-bellでも同じ経験をしていたはずだが、すっかり忘れていたらしい。
寝そべって荷重を均等にかけさえすれば、ちゃんと寝心地のいいエアマットでいてくれる。

もうひとつ。うるさい。
材質のせいだろうが、ガサガサと擦れる音がかなりうるさい。
まあ、寝ている分には別にいいと思うが、妙に気になった。

話が長くなった。
そして180cmで上記のようなことが判明し、「厚さがある程度薄ければSの119cmでいいのではないか?170gだし!」
・・・となって、Sも買ってしまったわけだ。
まったく、賢い買い物からは程遠い間抜けさだ。

そして、新戦力として長い間保留にしていたモノを、もうひとつだけ書きたい。シュラフだ。
なにしろ軽くて暖かいシュラフとなれば、超高額と決まっている。
しかし、ここに「シュラフカバーのいらない透湿防水で軽量な」という逸品が現れた。mont-bellのシームレスドライダウンハガー、という種類だ。

もちろん、高い。高いが、軽量で透湿防水だ。例の給付金をありがたく使わせていただいた。
シュラフカバーのいらない、ということは、シュラフカバー使用のこれまでよりひとつ空気層が減る、ということで、もしかしたら#5 + シュラフカバーより同グレードは寒いかもしれない。
#3にしてみた。8月下旬の横尾で、ぎりぎり暑くなく眠れるくらいだった。その後の3000mでは問題なかった。もう少し寒くなっても大丈夫だろうと思う。人間の体も季節に合わせて体感温度が変化するので、真夏の20度は誰もが寒く感じるが、真冬の20度だと暑く感じる。

さて。
エアマットであるがために、パンクを恐れて寝るまで座布団にはしなかったが、若干地面がごつごつしてはいたものの、なんとかそれでも過ごせた。
そして就寝時、エアマット周辺で角のありそうなものは残らず防水バッグに押し込み、シュラフに潜り込む。

20時、就寝。

2 件のコメント:

  1. ただ、提供して下さる動画をいつも楽しみにしています。自分はデブで登山は諦めてます。しかしながら、ウルトラライトの装備に憧れつつ、徒歩キャンプをしている者でもあります。背負子に荷物を積んでる時もすでにワクワクがとまりません。新聞紙を今回は、どれぐらいもってこう、と、米はアルファ米でも、メインディッシュの焼鳥の串うちを家でしてる時もワクワクがとまりません。今、自分で、出来ることだけで、満足です。で、壱号さんの動画で旨い酒が飲める、それに越したことはありません。

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  2. ありがとうございます(*´ω`*)
    時々はひたすら山の中にいたくて、こんな計画を立てたりしてみます。が、滅多に出来ないです・・・。(;^ω^)
    普通のキャンプをする友人と話をすると「徒歩でキャンプ!マジか?!」って言われます。まあ、そうかもしれません・・・。
    串うち、自分も一回やってみたいと思いつつ果たせないでいます。あ、しまった。笑'sのB6君Tiは息子が富山の寮に持っていっちゃったんだった。
    ( ´ー`)ノ

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